エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.319
2014.04.21 更新
文:GDM編集部 松枝 清顕
「Graphite 760T」はライトな自作派向けというよりも、玄人好みのするハイエンド志向のPCケースという性格が強い。こと水冷に関しては、フロント、トップ、リア、ボトムの計4箇所にラジエターが搭載できるため、いわゆる「DIY水冷」に対応する設計も大きなアピールポイントとなっている。CPUだけでなく、GPUも水冷化させ、高冷却ハイエンドPCを組み込むベースモデルとして、十分にその役割を果たしてくれるだろう。CPUヘッドからポンプ、ラジエター、冷却ファン、チューブ、フィッティングなど、各々好みのパーツがチョイスできる「DIY水冷」は自作PCならではの楽しみ方だが、本稿では手軽なオールインワン水冷ユニットをマウントしてみた。
H110 140mm口径ファン×2基が搭載できる、現状選択肢が少ない280mmサイズラジエター仕様のオールインワン水冷ユニット。標準搭載ファン(140×140×25mm)のスペックは、最大1,500rpm±10%、94CFM、35dBAだ |
AF140 QUIET EDITION レッド、ブルー、ホワイトのカラーリングが付属した、ドレスアップ用途としても人気の140mm口径ファン。スペックは1,150rpm/67.8CFM/24dBA/0.84mm-H2O。コネクタは3pinで、共振やノイズを抑える防振ラバーマウントが装着されている |
用意したのはCORSAIRブランドの「H110」。発売約1年を経たモデルながら、280mmサイズラジエター仕様のオールインワンユニットという貴重な存在だ。なお冷却ファンは付属品を使用せず、「AF140 QUIET EDITION」をチョイス。付属のカラーリングはレッドを選択した。
電源ユニットはCORSIAR「RM850」をチョイス。後方HDDケージ有りの状態で約230mm、取り外すと約360mmの広大な電源ユニット搭載スペースを持つだけに、奥行き180mmと比較的ロングタイプの「RM850」も難なくマウントできてしまう。
CORSAIR「RM850」 135mmm口径ファンを搭載した奥行き180mmの80PLUS GOLD認証取得 1系統 850W静音電源ユニット。高品質日本メーカー製105℃電解コンデンサを採用し、長期5年保証が提供される |
なお今回はスリーブケーブル「CP-8920069」「CP-8920045」も用意。ケーブルを1本ずつメッシュ状のスリーブで被膜することで取り回しを良好にするだけでなく、見た目にも断然美しい。
電源ユニット搭載スペースが広いだけあって、セミロングタイプの「RM850」がコンパクトに見える。モジュラー式コネクタの直ぐ横には裏配線用ケーブルマネジメントホールが確認できる。最短でケーブルをマザーボードトレイ背面に引き回す事ができるだろう | |
自動車に置き換えると「パワーケーブル」を付け替える感覚で贅沢にスリーブケーブルを使用。若干余分な出費である事は確かながら、仕上がりは格段に向上する |
さまざまなスタイルがあれどCORSAIR製PCケースに共通していえるのは、「所有せずとも1度は組み込みをしてみたくなる」という点だろう。独自設計の妙と、なるほどと感心させられる仕掛けの数々は、「自作心」をかき立てる。どこか真似事の多いPCケースは、たちどころに市場から淘汰される運命にあるが、CORSAIR製PCケースに限っては、その心配は無用であろう。
前作「Graphite 600T」の所有者でもある筆者は、後継モデルである事を念頭に「Graphite 760T」の検証を進めてきた。組み込みを終えたところで前作の面影はなく、まったく新しい設計のPCケースという印象を持った。構成パーツ各々の搭載エリアはゆったりと空間が確保され、ハイエンド構成を好む自作派のリクエストを見事、形にしている。
CORSAIRの最大の強みは、先述で触れたように多岐に亘るPCパーツのラインナップにある。マザーボードやグラフィックスカード等を除き、主要構成パーツの最新ラインナップを自社ブランドに持つことで、それらを詰め込んだ時の完成形を想定し、見合ったPCケースを設計すればいい。規格ありきの自作PCだけに汎用性は必要だが、最新構成パーツが必要とする冷却能力や、エアフロー設計、空きスペースの必要寸法など、自社内だけで多くの助言が容易に集まるだろう。
このスタイルを確立してしまったCORSAIRの壁は厚く高い。出来が良くて当然だ。