エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.335
2014.06.24 更新
文:GDM編集部 松枝 清顕
今回組み込み検証用に用意したマザーボードは、ASRock「H97 Performance」。305mm×218mmというサイズで、幅が若干短い(ATX規格は244mm)以外は、一般的なモデルと考えていい。
さて「RAVEN 5」に組み込んでみたところ、ボトム部に標準搭載される180mm口径の「Air Penetrator」まで、実測約90mmの空きスペースが確保できていた。「Air Penetrator」の厚さは32mmだが、標準搭載ファンの厚さを加算すると、約122mmの空きスペースになる。ラジエターをマウントさせる場合に重要となる空間は、十分に確保されている。
ATXマザーボード(高さ305mm)とボトムファン「Air Penetrator」間の空きスペースは実測約90mm。ラジエターおよび冷却ファン選定時には参考にして頂きたい |
冷却性能と静音性を追求するあまり、大型CPUクーラーをチョイスしたいというニーズは多い。理論上、放熱面積の広い大型ヒートシンクと、大口径ファンの組み合わせは冷却性能面で有利だが、PCケースに収められるかがポイントになってくる。特にCPUクーラーの高さがネックで、「RAVEN 5」では公称162mmまでのCPUクーラーは搭載可能とされている。
大型サイドフローの多くは、高さ160mm前後。162mmまでサポートする「RAVEN 5」では、CPUクーラー有効スペースの詳細が開示されている | |
実測ではマザーボード基板から高さを計測しているが、約170mmとなり、162mm+9mmの公称値とほぼ相違は無かった |
CPUの冷却に水冷を選択する人も多いはず。「RAVEN 5」では、大型ラジエター搭載を想定し、ボトム部とトップ部にスペースが用意されている。トップ部は120mmサイズラジエターのみに対応するが、ボトム部は標準搭載される180mm口径の「Air Penetrator」を取り外す事で、240mmサイズまたは360mmサイズのラジエターが装着できるように設計されている。選択肢の幅は広い。
なお留意すべきは、「Air Penetrator」ファンを取り外す事で筐体内部のエアフロー環境が様変わりする点。「煙突効果」および「正圧設計」の「RAVEN 5」は性格を変え、大型ラジエターが搭載できる、水冷環境に最適化されたPCケースというキャッチフレーズとなるワケだ。
最後に拡張カード搭載スペースをチェックしておこう。搭載テストには奥行き270mmのグラフィックスカードを用意したところ、まったく問題なく搭載する事ができた。内部設計上、グラフィックスカードの延長線上にはボトムファンが搭載されている。実際に計測したところ、ボトムファンまでの距離はまだ約40mmほどあり、かなりの無茶をしない限り、多くのグラフィックスカードがマウントできるはずだ。
マザーボード90°回転レイアウトにより、バックパネルI/Oがトップ部にレイアウトされる「RAVEN 5」。拡張スロットや電源ユニットもトップ面に装着されていることから、各々に接続されたケーブルは、上面から”生える”事になる。マザーボード倒立レイアウトの前作を除く歴代「RAVEN」シリーズは、いずれもこのスタイル。「RAVEN 5」は、まさに原点回帰を果たしたワケだ。
かまぼこ型に口を開けたケーブルの出入り口。マザーボード90°回転レイアウトにより、背面はフラットで、奥行きは比較的短く設置できる |
「RAVEN 5」最大のキーワードとなる「原点回帰」。初代から3代目「RAVEN」まで採用されてきたマザーボード90°回転レイアウトに戻された新作は、実にSilverStoneらしいミドルタワーPCケースだった。積み上げてきた明確なコンセプトは伊達ではなく、随所に歴代「RAVEN」の良さが受け継がれている。
PCの核となるマザーボードの搭載方向を変えるだけで、構成パーツほぼ全てが移動の対象となる。一般的なレイアウトに慣れていると、組み込みながら錯覚を起こす不思議な設計だが、下から上に抜けるエアフローレイアウトおよび「煙突効果」は、構成パーツにとっては居心地が良いに違いない。ボトムレイアウトされる「Air Penetrator」からの直進的なエアフローにより、サイドフロー型CPUクーラーは恩恵を受け、外排気のグラフィックスカードは風の流れに逆らわない水平設置。「正圧」状態による防塵効果もアドバンテージとなり、排気効率の良さはトップクラスのPCケースと言える。
唯一ドライブ搭載数がネックになる可能性はあるものの、無闇に大型化させなかった割り切りは理解できる。発売間もない「RAVEN 5」。これから市場での反応が楽しみだ。