エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.336
2014.06.27 更新
文:GDM編集部 松枝 清顕
次に搭載される120mm口径ファンの騒音値を計測してみよう。アイドル時は32~33dBAあたり。さらに高負荷時を見ると、3.50GHzで40.2dBA、4.40GHzでも42.4dBAに留まっている。ここで気が付くのは、回転数の上昇と騒音値の変化の関係だ。
3.50GHzと3.90GHzでは1,500rpm台だったが、4.20GHzと4.40GHzでは1,700rpm台になっている。しかし騒音値は3.50GHzと4.40GHzでは、2.2dBAの違いでしかない。確かに最小値と最大値の回転幅である233rpm程度では、デジタル騒音計の数値は目に見えるほどの差は出にくいだろう。しかし付け加える必要があるのは、実際に耳で聞こえる“感覚”。個人差があり、これほどあてにならないものは無いが、3.50GHzと4.40GHzでは明らかに騒音値が上昇している事が分かる。4.40GHzでの高負荷継続状態は稀なケースだが、常に聞こえてくる音としては、若干不快に感じるだろう。
室内騒音値29.4dBA(室内温度25℃/湿度62%) |
テストセッションの最後に、非接触型温度計を使い、ヒートシンクのポイント別温度を計測してみよう。最小値はヒートシンク右上の29.6℃、最大値は最小値ポイントの下側および受熱ベース部の31.3℃だった。最小値と最大値の幅は1.7℃で飛び抜けている箇所はない。ポイント別全9カ所での計測結果から、受熱ベース、およびダイレクトタッチ式のヒートパイプにより拡散された熱は、アルミニウム製放熱フィン全体に、満遍なく行き渡っている事が分かった。
4.20GHz動作/高負荷状態15分経過時のポイント別温度計測結果 |
「Nic L31」は、オーバークロックされた大型ヒートスプレッダ搭載メモリとの共存を第一目的に設計された、ナロー型サイドフローCPUクーラーだ。自作市場で相変わらず高いシェアを誇るIntel LGA115x系だが、そのレイアウトから、隣接するCPUソケットとメモリソケットのスペースは、トレードオフの関係にあった。これを回避するには、CPUクーラーを小型化すればいい。しかし自作派の多くは「冷却能力」とメモリソケット上のスペースを、トレードオフの関係として容認しない。交換条件が飲めない以上、両者のスペースを確保しつつ、冷却能力を犠牲にしない高冷却CPUクーラーが求められていた。
今回検証を行った「Nic L31」は冷却能力を確保しつつ、物理的条件のクリアにも成功している。さすがに巨大なサイドフロー型CPUクーラーに比べれば、トップギアの差は出てしまうだろう。しかし通常使用する上において、冷却能力になんら不安は無い。さらに全高を140mmに抑えている点は実に扱いやすく、特に幅の狭いミニタワー筐体を所有している人には、お勧めできるCPUクーラーといえるだろう。自作派の声に耳を傾けて設計された「Nic L31」は、実によく出来ている。