エルミタ的業界インタビュー「オピニオン」 Vol.20

CORSAIR製PCケース生みの親、本社PMが語る新モデル開発秘話と日本市場

2014.08.15 更新

文：GDM編集部 Tawashi

ゲーマーのための小型ケース「Graphite Series 380T」

編集部：
COMPUTEXではもうひとつ、注目モデル「Graphite Series 380T」がありました。Mini-ITX対応モデルとしては「Obsidian Series 250D」に続く新製品です。


「Graphite Series 380T」。写真はエンジニアサンプルのため、このグリーンのモデルが発売されるかどうかは未定

George氏：
アメリカやイギリス、EUなど、ゲーマーの皆さんがMini-ITXというフォームファクタに注目し始めています。ASUSTeKやGIGABYTE、MSIといった人気メーカーからも、高性能なゲーミング仕様のMini-ITX対応マザーボードが発売されていますよね。拡張性といってもほとんどのゲーマーは、グラフィックスカードが1枚あれば十分ですから。
編集部：
同じMini-ITXでも「Obsidian Series 250D」とは、デザインがかなり異なりますね。
George氏：
ゲーマーのための小型ケースという意味では、必ずしもMini-ITXである必要はないと思います。あくまで「今使っているミドルタワーケースよりも小さくなるが高性能」というのがポイントです。そこでヒットしたのがBitFenix「Prodigy」シリーズでしょう。Mini-ITX対応ケースとしてはそれほど小さくはありませんが、丸みを帯びたデザインはゲーマーを中心に支持されています。ですから「Graphite Series 380T」も、世界的なトレンドに乗ったモデルといえます。
　ちなみに、デザインの一部はBMW Group DesignworksUSAが担当しています。例えば、電源スイッチ周りはBMWのエンジンスタートボタンを模したものになっているんですよ。


内部は作業の際にON/OFFできるLED照明を備えるなど、ユーザーに配慮した作りがいかにもCORSAIRらしい	BMW Group DesignworksUSAがデザインした操作インターフェイス周り

編集部：
CORSAIRとしてはMini-ITXサイズの「Graphite Series 380T」が、メインマシンのPCケースになると考えますか？
George氏：
3～4台のPCを持つ人はなかなかいません。やはり8割の人がPCは1台だと思います。そこで小型の「Graphite Series 380T」をメインPCのケースとする場合を考えて、「現在使用中のミドルタワーから、なるべくパーツの流用ができる」という点を重要視しました。もちろんマザーボード以外でという話ですが。ハイエンドグラフィックスカードや水冷ユニット、電源ユニット、ストレージ類などをそのまま搭載できるように考えて設計しています。
編集部：
COMPUTEXで展示されていた新作ケースの3モデル目「Graphite Series 780T」についてもお聞きします。正直なところ、4月に発売された「Graphite Series 760T」とほぼ同じかなと思ってしまうのですが。


COMPUTEXで展示されていた「Graphite Series 780T」。並べてみると、やはり新カラーのイエローが良く目立つ

George氏：
そうですね、機能の面では非常に似たモデルです。正直に言うと、バニラアイスクリームかチョコレートアイスクリームかの違いでしょうか。ケースではデザインが重要ですので、「Graphite Series 760T」より丸みを帯びた形状にした「Graphite Series 780T」もラインナップしました。
編集部：
それにしても「Graphite Series 760T」の「スイングアウトサイドパネル」はユニークなギミックでした。


「Graphite Series 760T」の代名詞ともいえるギミック「スイングアウトサイドパネル」は向かって左側に装備されている

George氏：
あれはですね、車のドアを見ていて思いつきました。1964年式のリンカーンコンチネンタル。4ドアタイプのコンバーチブルなのですが、観音開きに開くのです。これは使えるなと。
編集部：
ひとつ気になったのが、ブラックやホワイトといった定番カラーに加え、新たにイエローがあります。なにか理由はあるのでしょうか。
George氏：
ブラックやホワイト以外にもカラーバリエーションを増やそうという話になり、サンプルで6色（レッド/イエロー/ピンク/グリーン/ブルー/オレンジ）のモデルを作りました。それを社内に並べておき、皆で投票したのです。その結果、一番人気だったのがイエローでした。私はピンクに投票したのですが（笑）。
　それに加え、最近のマザーボードデザインが派手になっている影響はあります。ゴールドやレッドなどをヒートシンクに採用していますよね。サイドパネルをアクリル仕様にすると、内部が見えますから。派手なマザーボードカラーはある程度意識しています。だからと言って、他社製でレッドカラーのケースが売れているという話もあまり聞きません。それならば、1回チャレンジという意味も込めて他の色を、今回はイエローカラーをですね、出したらどうかという話になりました。



社内で人気投票が実施された数々のカラーバリエーション。結果はイエローモデルが1位に。残念ながらGeorge氏イチオシのピンクは落選したという