エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.349
2014.08.19 更新
文:GDM編集部 松枝 清顕
前作「Enthoo Primo」の特徴として真っ先に思い浮かぶのは、水冷構成に最適化された内部設計だ。特にひとつひとつのパーツを選定し、自由な水冷環境を構築するいわゆる「DIY水冷」に特化。これまで類の無い「DIY水冷特化型PCケース」として、狙い通りエンスージアストから高い支持と注目を得た。そして新作「Enthoo Luxe」もその設計思想を受け継ぎ、多彩なラジエター搭載スペース、冷却ポンプ設置用台座、リザーバータンク搭載スペースおよびブラケットを用意。DIY水冷に妥協しない仕掛けが装備されている。
水冷パーツの中で、最もスペースを必要とするのがラジエターだ。DIY水冷に最適化された「Enthoo Luxe」は、120mmから最大420mmまでのラジエターが搭載可能。マウント搭載エリアは、実に計4カ所が用意されている。ここでは搭載可能スペースを個別にチェックしておこう。
DIY水冷に特化された仕掛けとして、リザーバータンクとポンプの搭載スペース装備されている。ラジエターの搭載スペースが複数あるPCケースは存在するものの、リザーバータンクおよびポンプの設置台座まで備わったモデルはあまり例がない。これらはPhanteks「Enthoo」シリーズならではの装備であり、本格的DIY水冷を構築する目的で、このシリーズを選ぶ自作派も少なくないはずだ。別途固定ブラケット等を用意する必要がないため、コストの面でも有利だ。
リザーバータンクはリアの拡張スロット横、またはHDDケージが設置される上部に、付属の「Reservoir Bracket」で固定が可能 | |
ポンプ設置用ブラケット「Pump Bracket」は標準付属品。HDDケージを取り外し、用意されたネジ穴に「Pump Bracket」を固定すれば台座が完成。なおマニュアルにはブラケットのネジピッチ等の詳細図面が記載されているので、事前に搭載可否が確認できる |
電源ユニット搭載スペースは、ボトム部に用意されている。ここまでは一般的なPCケースとなんら変わりは無い。ただし大きく異なるのは、搭載スペースにカバーが装着されている点だ。
L字型に曲げられた「PSUカバー」の素材はスチール製。側面にはケーブルのスルーホールがあるのみで、電源ユニットをスッポリと覆い隠す事ができる。つまりHDDケージ同様、左側面のアクリル窓からの”景観”を考慮してのいわば”ドレスアップパーツ”といった存在だ。
拡張スロットはマルチグラフィックス構成を想定し、全8段を装備。拡張ブラケットはスリット付きで通気性を確保し、ハンドスクリューにより固定されている。
ホワイト筐体ながら拡張ブラケットのカラーはブラック。通気性を考慮したスリット付きはもはや定番の小技だ |
CPUクーラーメンテナンスホール(カットアウト)のサイズも計測しておこう。開口部の広い「Enthoo Luxe」のカットサイズは、実測で縦約150mm×幅約205mmだった。フォームファクタによりCPUソケットの位置が微妙に違うため、バックプレートの一部が隠れてしまう事がある。しかし「Enthoo Luxe」では、その心配はいらないだろう。
W205×H150mm(実測値)のCPUクーラーカットアウト。広いマザーボードトレイだけあって、一般的なミドルタワーPCケースに比べ、開口部を広くする事ができる |
内部構造チェックの最後に、ケーブルマネジメント機構を確認しておこう。どんなに安価なPCケースでも、マザーボードトレイに穴を空けた、裏配線用のスルーホール程度の装備はあるだろう。またサイドパネルまでの裏配線スペースを設計段階で考慮したモデルも少なくない。実用的な側面が強く、独自アピールがしにくい地味な仕掛けだが、「Enthoo Luxe」は秀でて使い勝手がいい。
第1弾「Enthoo Primo」を継承したケーブルマネジメント機構は、要所にグロメット付きスルーホールをマザーボードトレイだけで8カ所を装備。結束バンドを固定するフック状の突起も至る所で確認できる。さらに裏配線で縦横を行き交うケーブルをマジックテープで固定する「Hook n Loop」も8本が装着済み。加えてロングタイプとショートタイプ計2本が付属品として同梱されている。マザーボードトレイとサイドパネルの空間も十分で、実に良くできている。