エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.357
2014.09.16 更新
文:GDM編集部 松枝 清顕
グラフィックスカードの搭載スペースも気になるところ。そこで検証用に奥行き270mmの2スロット占有モデルを用意。拡張スロット最上部にマウントし、装着感を確認してみよう。なお「Fulmo Q ECA3360B-GT(U3)」の製品情報には、拡張カード有効スペースの詳細が開示されている。それによると、通常では奥行き314mmまでのグラフィックスカード(拡張カード)が搭載可能。さらにネジ留めされた2.5インチシャドウベイの内側プレートを外せば、奥行き390mmまでのサポートに拡大。3.5インチシャドウベイのラインにある拡張スロットは、奥行き280mmまでの空間が利用できる。
開示されている内部スペース。エントリークラスのPCケースながら、最大390mmまでの拡張カード有効スペースを確保する事ができる | |
奥行き270mmの2スロット占有グラフィックスカードをマウント。同一ライン上の2.5インチシャドウベイまで、まだ十分な空きスペースがある |
電源ユニットの様子もチェックしておかなければならない。搭載テストにはCORSAIR「RM850」(型番:CP-9020056-JP)を用意した。135mm口径冷却ファンを搭載する、奥行き180mmのモデルだが、公称奥行き230mmサポートの 「Fulmo Q ECA3360B-GT(U3)」では、搭載になんら問題はない。
有効スペースの公称値は230mm。実際に奥行き180mmの電源ユニットを搭載すると、実測で約100mm程度の空間が残されている。拡張スロット有効スペースの図に戻ると、3段目は280mmと開示されているだけに、表記上の230mmは”控えめ”な数値という事になる |
最後にケーブルマネジメント機構を簡単にチェックしておこう。サイドパネルに設けられた段差により、マザーボードトレイとの間には公称16mmの裏配線スペースが確保されている。マザーボードトレイはシャーシギリギリのラインにあるため、サイドパネルの膨らみがなければ、とても裏配線など適わなかった。デザインと実用を兼ね備えた両サイドパネルは、実によく考えられている。
縦列にレイアウトされたスルーホールを有効活用。穴付近には結束バンドを通す事ができるフックが用意され、ケーブル固定に重宝する | |
縦横150mmサイズのCPUクーラーカットアウト。LGA1150マザーボードのソケット位置では、バックプレートに干渉することは一切無かった |
ENERMAX 「Fulmo Q ECA3360B-GT(U3)」最大のセールスポイントは、税抜3,000円台の売価だ。世には「安かろう悪かろう」という言葉があるが、ATXミドルタワーPCケースの常識に当てはめると、極めて安価な価格設定だけに、その質感や内部構造には大きな期待を寄せることはできない。多くは、「価格なり」という思いを抱くだろう。筆者も例外ではなかった。しかし冒頭でも触れたように、「Fulmo Q ECA3360B-GT(U3)」には旧世代のチープ感は一切なかった。
ENERMAXブランドという安心感も手伝って、売価から想像する粗悪なイメージは一切みあたらない |
こだわりの自作派は、重量4.2kgと比較的薄い鉄板に注文を付けるかもしれない。しかし電源ユニットや光学ドライブ、HDDやSSD、グラフィックスカードをマウントすると、これらが良い具合に補強の役割を果たし、筐体が一段ガッチリとした印象に変わる。このモデルに限った事ではないが、少なくとも華奢で頼りない構造物ではなくなる。
当然ながら、1万円以上のモデルに比べれば、コストダウンの痕跡は決してゼロではない。しかしながら内部設計は完全にイマドキなミドルタワーPCケースのそれで、実用上のマイナス点はほとんどない。
売価3,000円台のほころびを感じる事はなく、ある意味期待を裏切るPCケースであった。