エルミタ的一点突破 Vol.36
2015.04.09 更新
文:GDM編集部 松枝 清顕 / 池西 樹(テストセッション)
組み込み手順の確認が終了したところで、ここからは「NH-L9x65」の持つポテンシャルを負荷テストにより明らかにしていこう。CPUにはDevil’s Canyonの最上位モデルIntel Core i7-4790Kを用意。またファンの回転数は標準状態(以降Normal)に加え、付属の「Low-Noise Adaptor」(以降L.N.A)を使い減速した状態でも行っている。なお使用機材、およびレギュレーションについては以下を参照いただきたい。
標準状態では、アイドル時は約1,000rpm、高負荷時は約2,400rpmまで回転数が上昇 | |
L.N.Aを使用すると、アイドル時は約920rpm、最高でも約1,900rpm前後までで回転数が頭打ちとなる |
冷却テストレギュレーション |
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1)マザーボードはケースに組み込まない状態で計測 2)検証にはストレスツール「OCCT 4.4.1」を使用。高負荷状態30分経過時の温度を計測 3)温度計測には「HWMonitor」を使用。数値は「Package」の最大温度 4)騒音値は、冷却ファンから30cmの距離で計測 |
CPU温度(室内温度22.4℃) |
PCの起動後10分間放置したアイドル時の温度は、Normal、L.N.Aとも28℃で安定しており、回転数が低くても十分な冷却性能を発揮。一方、高負荷時はNormalで78℃、L.N.Aでは82℃と約4℃の差がついた。とはいえ、動作に不安がある温度ではなく、ケース内のエアフローが十分な環境であれば、L.N.A状態でまったく問題ないだろう。また急激な負荷上昇により見られるスパイク値は、いずれも最高86℃。ヒートシンクへの熱移動がスムーズにいかないCPUクーラーでは、冷却が間に合わず一気に温度が上がるものもあるが、「NH-L9x65」ではヒートシンク全体に効率的に熱が拡散できているようで、そういった心配がない。
冷却ファン回転数(室内温度22.4℃) |
アイドル時の回転数はL.N.Aが約920rpm、Normalが約1,015rpmで、その差は約10%。各種セットアップやソフトウェアのダウンロード、画像の編集などでも回転数が上昇することはなく、ライトな作業ならほぼ最低値のまま推移する。また高負荷時はL.N.Aで1,900rpm前後、Normalでは2,200rpmまで上がり、約15%の差がついた。ファンの最大値も前者が約1,900rpmで変わらないのに対して、Normalでは約2,400rpmまで上昇。ただし、その分CPU温度のスパイクが発生する頻度も少なくなっていた。
騒音値(暗騒音31.9dBA) |
回転数が約100rpm違うアイドル時だが、騒音値はいずれも34dB台でほとんど変化なし。あくまで主観ながら、聞こえてくるノイズにも違いはなく、いずれも極静音で動作する。また高負荷時はL.N.Aで38.4dBA、Normalでは42.5dBAまで上がり、その差は4.1dB。騒音が直接耳に入るバラック状態では音の変化に気がつくものの、耳障りというほどではなく、よほど静音化を追求したPCでなければ、その他の音にかき消されてしまうだろう。
空冷にこだわり続けるオーストリアの職人。エルミタゆかりの冷却機器メーカーNoctuaは、今回の新作でも実にいい仕事をやってのけた。
Noctuaと言えば、まずPCケースにようやく収まりきるほどの大型ヒートシンクや、デュアルファンに飽き足らずトリプルファンで運用する超ハイエンド志向のCPUクーラーを思い浮かべるだろう。一変、今回取り上げた「NH-L9x65」のように、約90mm四方で全高わずか65mmの小ぶりなCPUクーラーでさえ、じっくり開発に時間をかけて手を抜くことはない。
どこをとってもNoctuaらしい高い工作精度。性能面では中型サイドフローCPUクーラーと肩を並べる冷却能力を発揮し、動作音も十分及第点レベルに収められている。ロープロファイルを謳いながら、ロープロファイル以外でも十分に使える、それが「NH-L9x65」だった。
なお国内市場での発売は「近いうちに予定されている」と聞く。発売を心待ちにしたい。
(販売価格が現時点未定につき、「総合評価」は省略しました)