エルミタ的業界インタビュー「オピニオン」 Vol.23

新製品の投入は最優先。Thermaltake担当者にアレコレ聞いた日本市場への取り組み

2015.05.07 更新

文：GDM編集部 Tawashi

Thermaltake

編集部：
Thermaltakeの生産拠点はどこですか。
Ian氏：
PCケースは中国ですが、カスタム水冷「Pacific」シリーズは、ポンプを除くほとんどのパーツが台湾製造です。コストは高くなりますが、水冷という製品の性格上、台湾製造にこだわっています。
編集部：
台湾本社には約200人のスタッフがいるとの事でしたが、研究開発（R&D）やデザイン担当のチームは何名くらいですか。
Ian氏：
R&Dに10名。同じくデザイン担当のスタッフも10名程度います。まずはR&Dからきたコンセプトモデルを、本社5階のテストルームでじっくりと検証。その後、売れるようなカッコイイデザインを考えます。

台湾を拠点に世界中へ展開。本社スタッフは約200名、各国ブランチも含めると500名近くが在籍しているという

編集部：
そこには当然、Ianさんのようなマーケティングチームの意見も反映されると。
Ian氏：
ええ、もちろんです。R&Dやデザイン、マーケティングまで揃う企画会議があります。さらに会議には社長が必ず参加をして、意見を言います。彼は仕事で世界中を飛び回っていますが、そこで出会った取引先やユーザーからさまざまな意見を聞き、それらを反映させるような製品を提案します。
編集部：
社長自らが製品開発に携わっていると。
Ian氏：
ほぼ全ての製品がそうです。ただ、そこにはメリットとデメリットがあります。メリットは、何といっても物事の進行が早い。製品化するとなったら、一気にプロジェクトは進みます。デメリットは、社長にダメ出しができるかという点ですね。社長の好みだけで製品化が決まるような事があってはなりません。
編集部：
スタッフからのダメ出しを受け入れる雰囲気が出来ているという事ですね。
Ian氏：
自分はよく社長にダメ出しも意見もしますね。例えば、先日公開したケース「Mute F51」。フロントパネルにThermaltakeのロゴがないんですよ。ドアを開ければ下のほうにありますが。これは、日本市場では「フロントパネルには何もないほうがいい」という意見を強く主張した結果です。だって、見えないほうがいいでしょう（笑）。


新作ケース「Mute F51」。Thermaltakeの文字はフロントドアを開閉しないと確認することはできない

編集部：
Thermaltakeクラスの規模では、珍しいかもしれませんね。
Ian氏：
珍しいと言えば、Thermaltakeの製品リリースサイクルは、他のメーカーと大きく異なる点があります。多くのメーカーでは、PCケースの新製品は、四半期に1、2モデル前後というのが一般的です。しかし、Thermaltakeでは「Core」シリーズや「Core X」シリーズのように、一気に5、6モデルの製品を投入する事も珍しくありません。
編集部：
メーカーとしては大変ですよね。
Ian氏：
もちろん、全てのPCケースに金型を用意しなくてはなりませんから、投資コストは正直かなりの負担です。それでも、自作ユーザーに「本当に欲しいケースを買ってほしい」という思いから、ラインナップを揃えるようにしています。
編集部：
もう少し具体的にお願いします。
Ian氏：
「水冷が組めるケースが欲しいけど、15,000円は予算オーバー」という人がいれば、ひとつ下の12,000円で購入できるモデルも用意する。「このケース、自分の部屋には少し大きすぎる」という人がいれば、一回り小さいモデルも用意する。もちろん全てのニーズに応えられるわけではありませんが、選択肢はあくまでユーザー側にあるという状況を提供したいのです。
編集部：
Thermaltakeとして、コストをかけてまで努力している点は分かりました。だだ、多数のラインナップを在庫して販売しなければならないショップや代理店は少々たいへんですね。
遠藤氏：
今までのThermaltakeは、型番が変わるとデザインやコンセプトも変わり全く別の製品になっていました。ある意味当然なのですが、分かり易く言うと“点”での展開だった。これが昨年デビューの「Core V1」以降、シリーズ共通のフロントデザインやコンセプトというものが出来て、“線”での展開が可能になったワケです。



シリーズは「Core」と「Core X」の2ラインナップながら、2014年8月から2015年5月までの10カ月間で、実に10モデルがリリースされている

遠藤氏：
通販メインのショップであれば、6モデル全て取り扱ってもらう。店頭販売メインのショップであれば、バイヤーが選んだ3モデルを販売しようという選択が可能になりました。さらに水冷に強いショップであれば「240mmクラスのラジエターが搭載できる、このモデルにしよう」という注文にも対応できます。
エンドユーザーはもちろんですが、バイヤーにも選択肢が提供できるのは、代理店としてもメリットであると考えています。個人的には、車の販売方法に似ているかなと。Aという車種のコンセプトやデザインは共通で、グレードや価格設定が違いますよね。ユーザーは、自分の予算や環境にあったケースを選択するだけでいいのです。

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