エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.420
2015.06.24 更新
文:テクニカルライター・藤田 忠
USB3.0接続 | USB3.1接続 |
シングルスレッドによるシーケンシャルアクセスは、USB3.1接続によるパフォーマンスアップが見られ、読込で80.5MB/sec、書込で60.2MB/sec向上している。ただ、マルチキュー&スレッドによるランダムテストの「4K Q32T8」でUSB3.0に負けており、USB3.1接続時は読込が136MB/sec、書込で43.62MB/secもUSB3.0接続時からダウン。シングルキュー&スレッドによるランダム「4K」と同程度のパフォーマンスになっている。テストのキュー数を減らしても数値が向上することはなかったので、今回用いたUSB3.1環境は、どうも小さなファイルのランダムアクセスが苦手なようだ。ASMedia「ASM1142」以外のUSB3.1コントローラが登場したら、パフォーマンスに違いが出るか、是非とも試してみたい。
内蔵ストレージと違って、大容量化している動画や写真、音楽データの保存(バックアップ)やちょっとしたデータの持ち出しなどが、主な使い方となるUSBストレージデバイスは、あまりランダムアクセス性能を重視する必要はないが、USBストレージからOSを起動するといった用途では影響が大きいかもしれない。
USB3.0接続 | USB3.1接続 |
USB3.1接続時における省電力機能の有効/無効は、考えていた以上に影響が出ており、シーケンシャル(「Seq Q32T8」「Seq」)では最大98.1MB/secもダウン。「Seq」の書込はUSB3.0接続時と同レベルになってしまった。USB3.1コントローラチップがASMedia「ASM1142」しかない現状では、USB3.1利用時は「C-State」を無効にしたほうがいいだろう。
USB3.1のストレージデバイス性能は見えてきたので、最後は「USB 3.1/A+C Card」の魅力であるType-Cコネクタを試すことにした。
ただし残念ながら、Type-Cコネクタを備える周辺機器は、まだまだ少ない。新型12インチMacBookがType-Cを採用したおかげで、Type-CタイプのUSBハブやメモリリーダライタなどが登場しているが、デスクトップPCで使うには備わっているケーブルが短い。さらに延長しようとしても、Type-Cの延長ケーブルは見当たらないという状況だ。
そこで、新型MacBook向けのType-C→Type-Aメス変換アダプタを用意。試しに光学ドライブやUSBメモリなどを接続したが、問題なく使用することができた。また、「USB 3.1/A+C Card」のType-Cポートは3Aの給電に対応し、スマホやタブレットPCなどの高速充電が謳われているので、試してみることにした。
試したのは、PCのUSBポートからの充電時に必要とされるアンペア数が比較的大きいiPad(iPad Air 2 Wi-Fi)だ。iPad Air 2は、マザーボード上のUSB3.0ポートからの出力が900mA(USB3.0の定格出力)あれば充電できるのだが、マザーボードによっては出力が740mA~800mA程度まで下がることがあり、充電できないことも……。そんなiPad Air 2を「USB 3.1/A+C Card」のType-Cで接続すると、まったく問題なくバッテリーアイコンが充電状態に変化した。USB電圧測定器を間に接続して計測してみると、充電中は1.51Aを出力。1.2A以上が必要な旧型iPadユーザーなども安心だ。そのほか、Apple「iPhone 6」やAndroidタブレットのLenovo「YOGA TABLET 10 HD+」を試したが問題無く動作・充電が可能だった。
Type-Cコネクタを備えた周辺機器が増えるまでは、Type-C→Type-Aメス変換アダプタが必須になるが、Type-Cも無駄なく使うことが可能だ。その上、「USB 3.1/A+C Card」搭載のType-Cは、3Aの給電に対応しているので、従来のUSBポートよりもUSBバスパワー動作時の安定性向上や高速充電に期待できる。
2台のSSDでRAID0を構築したUSB3.1ストレージデバイスで、SATA3.0(6Gbps)を超える700MB/secの転送速度を叩き出したUSB3.1。その高速性を体験するには、どうしてもRAIDなどに対応した外付けストレージデバイスの登場待ちになってしまうが、SATA3.0(6Gbps) SSDと続々登場しているUSB3.1対応の外付けHDD/SSDケースの組み合わせでも、アクセス性能の向上を見込めるので安心だ。その上、供給電力の向上によるUSBバスパワー動作の安定性確保といったメリットもある。
高速だが自作PC市場では、まったく普及しなかったThunderboltと違って、普及することが確定路線と言えるUSB3.1は、今後マストになることは必至。ただ、今すぐに導入する必要があるかというと微妙なところ。これから新たにPCを組むならUSB3.1を搭載したマザーボードをオススメするが、既存PCへの増設なら、対応周辺機器やUSB3.1コントローラチップの種類が増えてからでもいいだろう。