エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.433
2015.08.22 更新
文:GDM編集部 松枝 清顕 / 池西 樹(テストセッション)
ヒートシンクの放熱フィンをじっくり観察すると、ヒートパイプの後ろが「ハの字」にカットされ、小さくフィンが曲げられている様子が確認できる。これがENERMAXの特許技術「VGF(Vortex generator flow)technology」だ。52枚が重なり構成されるヒートシンクは、全てのアルミニウム製放熱フィンに「VGF」加工が施されている。その仕組みはこうだ。
特許を取得した「VGF(Vortex generator flow)technology」。フィンは手前に向かって立ち上がっている |
取り込まれた空気は排出方向に風が直線に抜けていく。その際、空気の抵抗となるのが、4本のヒートパイプだ。風を受ける背面側は、どうしても”無風領域”となり、ヒートシンク内のホットスポットになってしまう。これを回避するため、「VGF」により風の流れに変化を付け、無風領域をなくす事で冷却効果を高めようとしているのだ。
「VGF」加工により、ヒートシンク内部にできるホットスポットを無くし、冷却効果を向上させている |
さかのぼること、この特許技術は、ヒット作となった「ETS-T40」シリーズから継承されている。ENERMAXのサイドフロー型CPUクーラー、最大の特徴と言えるだろう。
アルミニウム製放熱フィンにも工夫がある。空気を強制的に取り込む事を目的として設計された、フラップ形状「VEF(Vacuum Effect)」は、ヒートシンク内部に最適な気流を作り出す。一般論としてヒートシンクは放熱面積が広いほど有利とされる。一方でスリム型ヒートシンクを採用する「ETS-T40Fit Series」は、ヒートシンク内部のエアフローを最適化する事で、熱離れのスピードを高める狙いがある。
独自の「VEF(Vacuum Effect)」により、ヒートシンクに最適な気流を作り出す事に成功している(画像は「ETS-T40F-BK」) |
スリム型ヒートシンクを採用することから、φ6mmの銅製ヒートパイプは4本で構成されている。また受熱ベース部分に注目すると、CPUにダイレクトに接触する「HDT(ヒートパイプ ダイレクト タッチ)」を採用。熱伝導のロスがなく、ヒートシンクにCPUの熱を素早く移動させる事ができる。
4本の銅製ヒートパイプはφ6mm。CPUに直接触させる「HDT」を採用する事で、受熱ロスを防ぎ、ヒートシンクへの熱移動を確実なものにする |
「ETS-T40F-TB」に標準搭載される冷却ファンは120mm口径の「T.B.Silence PWMタイプ静音」。ENERMAX独自のツイスターベアリングを採用する。回転数は800~1,800rpm、騒音値は10~21dBA、風量は37.57~86.70CFM、静圧は0.72~2.41mmH2Oとされる。
またこのモデルには「Fan RPM Reduction Adaptor」と呼ばれる”減速ケーブル”が付属。これを接続すると、定格の12Vから電圧を下げる事ができるため、回転数が落ちる仕組み。あくまで任意ながら、低消費電力タイプのCPUを冷却する場合など、定格回転数を必要としなければ、より静音性を高めることができる。なお接続時のスペックは、それぞれ400~900rpm、8~11dBA、21.21~47.72CFM、0.31~1.31mmH2O。PWM可変幅は半分になり、比例して騒音値も低く抑える事ができる。
独自の角度が付けられたブレードが特徴の「T.B.Silence PWMタイプ静音」ファン。9枚羽仕様のスモークスケルトンだが、LEDは内蔵されていない | |
冷却ファンはプラスチック製のフレームにマウントされ、ヒートシンクには片側2つのツメで固定。工具いらずで着脱ができる |