エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.433
2015.08.22 更新
文:GDM編集部 松枝 清顕 / 池西 樹(テストセッション)
定格クロック:冷却ファン回転数(室内温度27.4℃) |
電圧を12Vから7Vに下げるFRRAを使うことで、回転数はおおむね5~6割低下。定格運用であれば冷却性能にも問題なく、静音性を重視するならFRRAは有効な手段になるだろう。また定格状態の回転数を確認するとアイドル時は1,024rpm、高負荷時でも最大1,263rpmまでしか上がっておらず、まだまだ冷却性能には余裕がある。
4.40GHz動作時:冷却ファン回転数(室内温度27.4℃) |
次にオーバークロック動作時の結果を確認すると、冷却性能が飽和しているアイドル時は回転数に変化なし。一方、高負荷状態では定格時が1,688rpm、FRRA使用時は914rpmとほぼ最高値まで回転数が上昇。冷却性能を重視するならデュアルファン構成を検討してみるのもいいだろう。
定格クロック:騒音値(暗騒音32.1dBA) |
定格に比べ大幅に回転数が抑えられるFRRA使用時は高負荷時でも35.4dBAで、バラック状態でも耳を澄まさなければ動作音が聞こえてこないほど。限りなくファンレス駆動に近い環境を作り出すことができる。また定格運用でも最高値は38.4dBAに抑えられており、ケースに収納してしまえばノイズが気になることはないだろう。
4.40GHz動作時:騒音値(暗騒音32.1dBA) |
回転数が低く抑えられるFRRA使用時は、オーバークロック状態でも静粛性は良好。高負荷状態が長時間続くような処理を行わないなら選択肢としてはアリだろう。また定格では42.9dBAまで騒音値が上昇し、耳に聞こえてくる風切音も明らかに変化する。とは言え、うるさいと感じるほどではなく、ケースに収め、デスクの下や脇に置いてしまえば十分ごまかすことができるレベルだ。
最後に非接触型デジタル温度計による、ポイント別温度を確認しておこう。なお計測はFRRAを使わずCPUクロックは定格にて実行している。
高負荷状態30分経過時のポイント別温度計測結果 ※カッコ内は反対面の計測結果 |
熱源から離れるに従って綺麗に温度が下がっており、受熱ベースで吸収した熱が、ヒートパイプによりヒートシンク全体に拡散している様子が見て取れる。
「Skylake」のために生まれた。そんな定義で検証した、ENERMAXの新作CPUクーラー「ETS-T40F-TB」は、TDP91WのCore i7-6700Kを”想定通り”、難なく冷却している。上位兄弟モデルのように、ヒートシンクに対する特殊なコーティングは施されていないスタンダードモデルだが、冷却パーツとしての仕事ぶりは「これで十分」と思わせる結果。夏場のテストであるにも関わらず、27℃台の室内環境でも定格・高負荷時で60℃台に収まった。製品の性格上、必ずしもオーバークロックでカツを入れ続けるような使い方を得意としないが、通常の用途ではレベルの高い冷却機器という考えに異論はない。
また特許技術「VGF(Vortex generator flow)technology」や、フラップ形状の独自フィン「VEF(Vacuum Effect)」、さらに「HDT(ヒートパイプ ダイレクト タッチ)」により、スリム型ヒートシンク特有の、「素早い受熱」と「素早い放熱」のサイクルが、うまく機能しているように感じた。このあたりはさすがに先代「ETS」シリーズの特性が継承されており、新製品を乱発することなく、比較的長いスパンで熟成させていくというENERMAXの思想が、功を奏している部分かもしれない。
TDP180Wサポートと言い切ってしまうと少々オーバーかもしれないが、Skylakeの熱を十分に処理できる秀作であることは間違いない。