エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.440
2015.09.16 更新
文:GDM編集部 松枝 清顕
最後にCPUクーラーのメンテナンスホールを見ておこう。拡張カードが半分以上の面積を専有する左側エリアは、マザーボードの背面にあたり、CPUソケット周辺が大きくカットされている。これがCPUクーラーメンテナンスホールだ。カットサイズは実測で約W100×D150mm。ネジ留めやバックプレートを採用するCPUクーラーの換装やメンテナンスに便利だ。
高さ58mmでジャストサイズのSilverStoen「SST-AR06」はネジ留め式。4本のネジ穴はCPUクーラーメンテナンスホール内に収まり、マザーボードを取り外すことなく搭載できる |
幅87mmのスリム型PCケース「RVZ02」で懸念されるのは、エアフローレイアウトだ。冒頭のスペック表でも分かるように、このモデルには吸排気用のケースファンは一切搭載されておらず、増設スペースすらない。ゲーミングPCケース「RAVEN」シリーズにあって異例の事態だが、ここまで構成パーツの組み込み作業を行い、そのスペースが用意できない事は容易に想像できる。では熱問題に対する考え方はどうなっているのだろうか。各構成パーツを組み込んだ状態で、両サイドパネルを閉じてみると、その答えが見えてくる。
マザーボードや電源ユニット、光学ドライブやSSDが搭載された右側エリアの様子。通気口仕様のアクリル窓からトップフロー型CPUクーラー「SST-AR06」や電源ユニット「SST-SX5000-LG」の冷却ファンが確認できる | |
テスト構成ではグラフィックスカードのみを搭載した左側エリア。グラフィックスカードに搭載された赤いシロッコファンが確認できる |
「RVZ02」のエアフロー構造のポイントは、アクリル窓に複数設けられた通気口(スリット)にある。CPUクーラーの冷却ファン(吸気)、電源ユニットの冷却ファン(吸気)、さらにテストで用意したグラフィックスカードのシロッコファン(吸気)は、いずれも通気口仕様のアクリル窓に隣接しており、すべてが直接フレッシュな外気を取り入れる事ができている。
つまり構成パーツで温度が上昇したPCケース内部の空気を一切使用せず、まるでバラック状態で組み込まれているかのような状態を作り出す事で、各冷却機器は最大のパフォーマンスが出せるように考慮されているというワケだ。これは兄弟モデル「ML08」シリーズも同様。左右の半分にもおよぶ面積を通気口としたスタイルは、ハイエンドPCパーツをチョイスする自作派にも十分対応できるように設計されているのだ。
久しぶりにSilverStoneの新作PCケースをじっくりといじり倒した。すべての検証が終わったところで、「RVZ02」の性格を簡潔に言い表すならば、「いかにも自作PC好きな設計者が作ったPCケース」という表現が最も当てはまるように思う。
ミドルタワーPCケースよりも確実に設計が難しいであろうスリム型PCケースにあって、設計者の意図に共感できる場面が幾度となくあった。なるほど「こうしたかったハズ」を難なくまとめ、「こうする事」で回避する。さらに歴代「RAVEN」シリーズで積み上げた「経験値」により、これまでにないPCケースを作り上げてしまう。SilverStoneはそういうメーカーであり、「RVZ02」もまた、見れば見るほどそうした意図を随所に感じることができた。
拡張性に難ありのスリム型PCケースは、エンスージアストと呼ばれる領域の自作派にとって、物足りないと感じるかもしれない。かくいう、筆者もほぼ同意見で検証を始めたが、それが食わず嫌いのたぐいであった事を思い知ることになった。大げさに言えば、自作に対する考え方が変わる、そんなPCケースではないだろうか。