エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.492
2016.05.28 更新
文:GDM編集部 松枝 清顕
ボトムレイアウトを採用する電源ユニットの搭載有効スペースは180mmまで。これなら140mm口径ファンを搭載するハイエンドクラス電源ユニットも搭載できるだろう。
搭載テストに用意したのは、Antecの80PLUS PLATINUM認証モデル「EA-650 PLATINUM Rev2」。高効率電源ユニットによる低発熱の利点から、搭載ファン口径は120mm。奥行きも140mmに収められている。ただし各種電源ケーブルは直結タイプだけに、不要なケーブル(コネクタ)の行き場は考慮しなければならない。
搭載テストに用意した、Antec EarthWatts Series「EA-650 PLATINUM Rev2」 |
有効スペースより40mm短いボディだけに、見た目にもゆったりとマウントされている事が分かる。ただし気になるのは、隣に位置する120mm口径ファン増設スペースの存在。「EA-650 PLATINUM Rev2」のような直結ケーブルの場合、両者を共存させるには各パーツに伸びるケーブルを最短で背面に引き回す必要がある。とは言え「P9」のケーブルマネジメント機構の備えは十分で、接続ポイント毎に用意されたスルーホールを上手に使えば、増設した冷却ファンにケーブルが絡まる事はないはずだ。
このPCケースには、HDDケージを全て取り払う事でフロント部に240mmサイズ、トップ部に240 / 280 / 360mmサイズ、リア部に120mmサイズのラジエターがそれぞれ搭載できる。さらに上下2段のHDDケージを全て取り払った”跡地”には、高さ約300mmの空間が確保でき、ポンプ+リザーバータンクの設置に対応。このように「P9」は水冷ユニットユースにも対応できるよう、設計されている。
今回は最も手軽なオールインワン水冷ユニットを用意。トップ部にラジエターを設置するスタイルで搭載テストを試みた。
搭載テストにはAntecの新型オールインワン水冷ユニット「Kuhler H2O 1200 Pro」を用意 | |
240mmサイズラジエター搭載時、「トップファンカバー」は一番面積の広い「A」のみを取り外し、「B」「C」は固定したまま。隙間を無くし、極力音漏れを防止しようという作戦だ |
搭載に関して特に問題はなく、スムーズに作業は完了した。トップ部へのラジエター固定はトップファンカバー「A」を取り外し、天板の8箇所にネジ留めを行った。ちなみに全ての冷却ファン搭載穴は、近頃多く見受けられるスリットタイプではなく、単なる丸穴タイプ。微妙なポジションの調整ができないため、検証に用意した「Kuhler H2O 1200 Pro」の水冷チューブがフロント方向となる”1方向”でしか搭載ができなかった。多少のストロークでも物理的な干渉が回避できる事がある。冷却ファン搭載穴に関しては、要改善ポイントと言えるかもしれない。
自作PC業界の流れに逆行するかのように、5.25インチオープンベイ3段を備えている「P9」。時代錯誤的な印象があるかもしれないが、これには理由があった。
奥行き170mmの光学ドライブと、240mmサイズラジエターの位置関係 |
トップパネル部にラジエターを組み込む場合、240mmサイズなら問題にならないが、120mm口径ファンを3基並べる360mmサイズの場合、5.25インチオープンベイに侵食する。フィッティングおよび水冷チューブのレイアウトによっては、2段分の5.25インチオープンベイを占有しなければならない。過剰と思われた全3段の5.25インチオープンベイはたちまちスペースが無くなり、最下段のみが利用できるというワケだ。このように、全3段仕様の理由は、大型ラジエターと光学ドライブの「共存」がポイントである事が分かる。
本稿の最後にファンコントローラーについて少し解説しておこう。スイッチ類や各種アクセスポートが並ぶ、フロント寄りトップパネル部には、ファンコントローラーが搭載されている。左右に分かれたスライドスイッチは、HIGH(高速回転) / STOP(ファン停止) / LOW(低速回転)の3モードが任意で選択できる。なお左右のファンコンはそれぞれ役割を分担。右側はトップファン2基とリアファン1基、左側はフロントファン2基とボトムファン1基を2つのグループに切り分け、それぞれを一括で制御するという仕掛けだ。
3モードから選択できるファンコントローラー。ここに配線される3pinコネクタには、各々接続するファンの搭載位置が記されている。各系統は一括して制御する事になるが、敢えて接続コネクタを変え、制御グループを自由に組む事も可能。もちろん空きコネクタがあっても問題ない | |
ほどなく「COMPUTEX TAIPEI 2016」が開幕するというタイミングでリリースされた、新型ミドルタワー「P9」。今だ人気が衰えない「P100」の存在は、どうしても比較対象として頭をよぎりながらの検証となった。
PCケースの設計における重要なポイントに、各構成パーツの「共存」が挙げられる。互いの物理的干渉の回避はもとより、熱源を分離させる事で、隣接するパーツへの影響を最小限に抑える必要がある。同時に組み込み易さも要求されるだろう。
もうひとつは静音と高冷却の「共存」だ。二層構造のサイドパネルや、トップファンカバーを装着する事で、上部への音漏れを防止。フロントパネルに至っては完全に密閉状態を作り上げ、動作音を内部に閉じ込める設計により「静音モード」で運用できる。一方で3枚のトップファンカバーは全て取り払う事が可能。たちまち高冷却志向「パフォーマンスモード」にシフトできる。両者をうまく使い分け、”いいとこ取り”も決して不可能ではない。互いは上手に「共存」できている。
やはり気になるのは「P100」の存在だが、似て非なる”兄弟”は、しばらくの間自作市場で互いに「共存」する関係になるだろう。そして数ある選択肢から、最終的には”この2択”になる事こそAntecの狙いであるはずだ。市場での反応に注目したい。