エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.498
2016.07.19 更新
文:GDM編集部 松枝 清顕 / 池西 樹
大まかなスペックと、その売価からおよそ最上位モデルである事は把握できた「MasterAir Maker 8」。ここからは評価サンプルを箱から取り出し、外観および細部のチェックを開始しよう。
高価でハイエンド志向の空冷CPUクーラーだが、外装パッケージはそれに見合う規格外の大型サイズだ。公称寸法は295×244×211mmで、それは電源ユニットを彷彿とさせる。
パッケージは下から上方向にパタパタと開くタイプ。CPUクーラー本体は上部に、付属品は3つの箱に別れ、下部に隙間なく収められている。なおこの上にはブリスター(フタ)が被されていた |
「MasterAir Maker 8」最大のセールスポイントと言えば、「3Dベイパーチャンバー」の採用にある。まずはここから解説をはじめよう。
これまでCooler Masterでは、「TPC 812」(2012年7月発売)、「TPC 612」(2013年8月発売)さらに「V8 GTS」(2014年2月発売)で、ベイパーチャンバーが採用されている。特に前者2製品は「バーティカルベイパーチャンバー」と呼ばれ、「V8 GTS」の水平に対し、垂直(バーティカル)方向に利用。ヒートシンクの熱移動スタイルが異なる。
そして「MasterAir Maker 8」で新たに採用される「3Dベイパーチャンバー」は、水平と垂直を組み合わせた、3Dへと進化した。
下手な説明よりもイラストを見て頂くと理解は早い。ベイパーチャンバーとは、Vapor(蒸気)とChamber(空間)からなる熱を移動させる装置を意味する。
ベイパーチャンバーの内部空間に封入された液体は、CPUの熱によって蒸気に変わり、熱を冷やすアルミニウム製放熱フィンへ拡散させる。そして温度が下がった蒸気は液体に変わり、元の空間に移動。気体→液体→気体のサイクルにより、ヒートシンク全体に熱を拡散させ”熱輸送”を行うというワケだ。
ヒートパイプと同様の原理ながら、熱を輸送する能力は高く、小型化ができるというメリットがある |
「MasterAir Maker 8」では、ベイパーチャンバーとヒートパイプを一体成型。8本あるヒートパイプの4本が受熱ベース部分と一体化させ、立体的に熱移動の経路を作り上げたものが、「3Dベイパーチャンバー」となるワケだ。なお手元資料によると、従来型銅製受熱ベースに比べ、19%のパフォーマンス向上が見込まれている。その数字は決して少なくはない。
ちなみにベイパーチャンバーだが、近頃では他社製のCPUクーラーや、VGAクーラーでも採用例がちらほら見受けられるため、熱心な自作派なら馴染みがあるだろう。とはいえ、ヒートパイプほど広く普及していない。その背景に高過ぎるコストの壁がある。
冒頭「MasterAir Maker 8」は高価な製品である事を知ったわけだが、空冷最上位を狙う製品コンセプトである以上、多少のコストアップは目をつぶり、最も有効な手段をチョイスしたというワケだ。とにもかくにもテストセッションの結果に期待しよう。
2012年7月に検証を行った「TPC 812」のバーティカルベイパーチャンバー。採用初期の製品とあって、外観上の見た目はやや開発途上の感があった |