エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.522
2016.10.28 更新
文:GDM編集部 松枝 清顕
ボトムカバーの装備に加え、シャーシの構造上、電源ユニットの装着は背面から行う事になる。搭載スペースの開口部、その外周には4本のハンドスクリューにより搭載された枠がある。これに電源ユニットをネジ留めし、シャーシに固定すれば作業は完了。この搭載方法は、左右側面に十分な開口部が確保できない小型のPCケースで採用される事が多い。側面からのインストールとは違い、枠の分だけパーツ点数が増えること、さらにそれをシャーシに固定する作業の発生がデメリット。一方で、前後のスライドによりケーブル類の処理はし易い。
四隅のハンドスクリューをゆるめ、枠を取り外してから電源ユニットを固定。前後のストロークによる作業は、複雑に絡み合うケーブル類を”雪掻き”さながら内部空きスペースに押し込む事ができる | |
電源ユニットは、3.5インチシャドウベイと同一フロアに共存。占有できるスペースは実測で約270mmだった。これだけの空きがあれば、ケーブル直結式の電源ユニットでも余ったケーブルを収納しておけるはず |
セッションの最後に、水冷ユニットを組み込んでみよう。近頃ではパーツをひとつずつ選択するDIY水冷構成も増えつつある。「S340 Elite-VR」の設計を今一度確認すると、120mmサイズ以上のラジエターを搭載するスペースがフロント部に限定される。またボトムカバーと筐体の奥行きを考えると、リザーバータンクやポンプの設置場所を捻出する事が難しい。そもそもNZXTは、オールインワン水冷ユニットをラインナップしているため、「S340」はそれを使う事が前提で設計されていると考えていいだろう。
そこで今回は140mm口径ファン2基が搭載できる「KRAKEN X61」を用意。フロント部に280mmサイズラジエターを搭載し、オールインワン水冷ユニットによる冷却システムを構築してみよう。
NZXTの看板モデル「S340」。2014年のデビュー以来、徐々にバリエーションを増やし、今なお進化を続けている。新作「S340 Elite-VR」は、現在の自作PC市場で最も注目を集める「VR」にフォーカスし、これを上手く取り入れた。
ベースモデルとなる「S340」は、決して大振りなPCケースではない。これまで一般的だったフロントパネル裏のシャドウベイユニットを廃止し、限られた内部容積をフルに活用。どこよりも早く取り入れたボトムカバーを「S340」にも採用し、巧みなケーブルマネジメント機構を組み合わせれば、雑然としたケーブルをすっきり配線できる。そして新たに採用された強化ガラスは、広く内部を見渡すことができる。
「S340」はロングセラーの予感がする。それは自動車に似て、新色の追加や特装車、限定モデルなど、マイナーチェンジを繰り返し、熟成させていく。これを実現するには、ベースとなる基本設計が確かである必要がある。「VR」の次は、どこに食指を動かすのだろう。