エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.568
2017.05.18 更新
文:エルミタージュ秋葉原編集部 池西 樹
「X370GTN」では、「AMD Pstate Configuration」の「Core FID」を変更することで、25MHz刻みにCPUのクロックを調整する事ができる。値の表示が16進数のため難しく感じる人もいるだろうが、実際には「+/-」キーで数値を変更すると「Frequency」(クロック表示)がリアルタイムに変更されるため、一般的な倍率変更と同じように設定を行うことができる。なお今回はメインストリーム向け製品ということを考慮し、コア電圧をいじらずどこまでクロックを引き上げることができるのかチェックしてみることにした。
今回のCPUでは、定格+300MHzの3.90GHzまではOSの起動、ベンチマークとも問題なく動作させることができた。ちなみにもう1段階上の3.925GHzにするとOSの起動に失敗することもあり、このあたりが定格電圧の限界のようだ。
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CINEBENCH R15(cb) |
続いてオーバークロックの効果を「CINEBENCH R15」で確認していこう。負荷が小さいシングルコアテストは、定格でも動作クロックが3.90GHz前後に引き上げられるためスコアは変わらず。一方マルチコアは約6%スコアが上昇。倍率変更のみの簡易チューニングとしては満足いくスコアだ。
最後に簡易チューニングによるオーバークロックで、どの程度消費電力が増えているのか確認していこう。アイドル時は起動直後10分間放置した際の最低値、高負荷時は「CINEBENCH R15」実行時の最高値とした。
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消費電力(W) |
アイドル時は省電力機能によりクロック、電圧とも同等レベルまで引き下げられるためほとんど変化なし。高負荷時でも+5.1Wの微増にとどまり、電源回路や電源ユニットへの影響も軽微だ。シングルスレッド(または準ずる)処理では大きな効果は望めないが、マルチスレッド処理で性能が欲しい場合には、コアクロック調整による簡易チューニングは有効な方法となるだろう。
初のRyzen対応Mini-ITXマザーボードとして市場に投入されたBIOSTAR「X370GTN」。あくまでもコストパフォーマンス帯に位置づけられる製品のため、旧世代のオーディオコーデックや、ワイヤレスネットワークへの非対応など、ハイエンドモデルと比較すると見劣りする部分があるのは事実。一方で、NVMe対応のM.2スロットや、USB3.1 Gen.2 Type-Cポートなど、Socket AM4プラットフォームの注目機能は網羅。最近のゲーミングマザーボードでは必須とも言えるLEDライティング機能も実装され、一般的な使い方であれば機能面に不足を感じることはないだろう。
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Mini-ITXマザーボードにありがちな“無理をしている”印象もなく、バランス良くまとまった「X370GTN」。8コア/16スレッドというハイエンド環境を手軽に構築できる |
また高耐久なコンポーネントや各種保護回路、最上位Ryzen 7 1800Xのオーバークロックにも対応する堅牢な電源回路など、マザーボード本来の機能は充実。さらにSocket AM4マザーボードでは後発ということでBIOSの成熟も進み、解禁当初に一部の製品で聞かれたメモリ相性などのトラブルに遭遇することもなかった。
これまで長らくKaby Lakeの一強時代が続いてきたコンパクトPC。その牙城を崩す製品を低価格帯で投入してきたBIOSTARの心意気には素直に敬意を評したい。