エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.582
2017.07.14 更新
文:エルミタージュ秋葉原編集部 池西 樹
最後にオーバークロックによってどの程度消費電力が増加するか確認しておこう。計測は「CINEBENCH R15」実行時における最も高い数値を高負荷時、起動直後10分間放置した際の最低値をアイドル時に設定している。
消費電力(W) |
今回のオーバークロックでは、コア電圧が固定となるためアイドル時でも定格から約10W増加。とは言え、このクラスのシステムであれば誤差の範囲で、目くじらを立てるほどではない。また高負荷時は、約120Wも消費電力が増加。「X299 Taichi」では高出力に対応する13フェーズ電源回路を搭載するため、動作に問題はなかったがSkylake-Xによるオーバークロックを検討しているなら、マザーボードの電源回路にはこだわる必要がある。
これまでIntelの独壇場だったハイエンド帯のCPUだが、AMD Ryzenシリーズの登場により、厳しい競争にさらされることになった。しかしプラットフォームレベルで比較すると、最高44レーンのPCI-Express3.0や、クアッドチャネル対応のDDR4メモリスロットなど、まだ差があるのも事実。さらにLGA2066では、メインストリーム向けに比べて対応が遅れていたストレージ周りも改善され、完成度は確実に上がっている。AMDもより上位の「Ryzen Threadripper」をベースにしたプラットフォームを準備中だが、現時点では未だIntelに一日の長アリだ。
必要な機能を厳選することで、高いコストパフォーマンスを実現した「X299 Taichi」。「Taichi」シリーズ初代「X99 Taichi」を彷彿とさせる完成度の高い製品だ |
そして今回検証した「X299 Taichi」に目を向けると、各社フラッグシップとの違いは一部のエンスー機能で、パフォーマンスへの影響はほとんどなし。特に13フェーズにおよぶ堅牢な電源回路や「Hyper BCLK Engine III」による詳細なBCLK調整など、オーバークロック向け機能については他社のハイエンドを凌ぐ充実ぶり。一方価格は40,000円台前半に抑えられており、ハイエンドモデルでは60,000円台の製品もザラというIntel X299マザーボードの中ではまさに破格。
Intel Z270やAMD X370など、ミドルレンジ帯の製品が充実しているメインストリーム向けプラットフォームでは、価格面でのメリットが出しづらかった「Taichi」シリーズ。しかしハイエンドプラットフォームではそのコストパフォーマンスの高さが際立つ結果に。スマッシュヒットを飛ばした「X99 Taichi」の再来となるIntel X299の鉄板モデルが登場した。