エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.595
2017.09.04 更新
文:エルミタージュ秋葉原編集部 池西 樹
CPUのコア倍率に加え、BCLK調整にも対応する「X399 Taichi」では、かなり細やかなチューニングが可能だ。そこで今回は全コア4.00GHz駆動を目指し、CPU倍率、BCLK、コア電圧を調整する手動オーバークロックに挑戦してみることにした。
動作電圧を1.300Vに設定したところ、コア倍率39.75倍、BCLK 101MHzの4.015GHzを達成。なお起動だけなら4.100GHz付近までコアクロックを引き上げることができた |
「CPU-Z 1.80.1」上からは動作クロックが4.014GHz、コア電圧は1.296Vで認識 |
今回のCPUでは、動作電圧を定格から+0.175Vの1.300Vに引き上げることで、コア倍率39.75倍、BCLK 101MHzの4.015GHzを達成。OSの起動はもちろん、ベンチマークの動作にも問題なく、テスト中に不安定な挙動を示すこともなかった。
続いて「CINEBENCH R15」のスコアを確認すると、定格でも8コア/16スレッドに対応するRyzen 1800Xの約1.8倍にあたる2,915cbという驚きのスコア。さらにオーバークロック時は約15%アップの3,350cbをマークし、マルチスレッド性能については間違いなくコンシューマ向け最高峰。またシングルコアのスコアは、定格時でもXFR機能により4.00GHzを超えるクロックで動作するため、162cbとこちらもかなり良好。シングルスレッド性能にも十分期待ができる。
最後にオーバークロックによってどの程度消費電力が増加するか確認しておこう。計測は「CINEBENCH R15」実行時における最も高い数値を高負荷時、起動直後10分間放置した際の最低値をアイドル時に設定している。
TDP180WのCPUだけあって定格時でも約300Wとかなり消費電力は大きめ。グラフィックスカードもハイエンドクラスのものを利用するなら600Wクラスの電源ユニットはほしいところ。またオーバークロック時は約70W消費電力が増加。Ryzen Threadripperでオーバークロックをする場合には「X399 Taichi」のような堅牢な電源回路を備えるマザーボードは必須条件となるだろう。
16コア/32スレッドというコア数を生かし、想像通りのマルチスレッド性能を発揮したRyzen Threadripper。9月25日にはIntelからも対抗となる18コア/36スレッドのCore Xシリーズ最上位モデルが登場する予定だが、少なくとも現時点では間違いなくコンシューマ向け最高峰。さらにハイエンドPCを狙うユーザーにとっては、64レーンのPCI-Express3.0による高い拡張性も気になるところ。23日には早くも価格改定が実施されコスト面の魅力も増し、これまで永らくIntelの一強時代が続いたハイエンド市場に大きな影響を与えたのは間違いない。
見た目の派手さはなく、質実剛健を地で行く「X399 Taichi」。グラフィックス系のワークステーションなどのオフィスユースにもピッタリだ |
そして今回の主役である「X399 Taichi」に目を向けると、X399マザーボードでは最廉価にも関わらず、他社のハイエンドモデルとの違いは10ギガビットLANや、基板上のLEDイルミネーションなどごくわずか。消費電力の大きいRyzen Threadripperのオーバークロックにも耐えられる堅牢な電源回路や、高品質コンポーネントによる信頼性・安定性を重視した設計は従来通り継承されており、コストパフォーマンスを重視するASRock「Taichi」シリーズらしい出来栄え。Ryzen Thredripperの持つ魅力を損なうことなくできる限りコストを抑えたい、そんな欲張りなユーザーにこそオススメしたい1枚だ。
協力:ASRock Incorporation