エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.613
2017.11.18 更新
文:エルミタージュ秋葉原編集部 池西 樹
コンシューマー向けアプリケーションでもサーバーCPUの性能を引き出すことができるのか。チェックしてみよう |
最後にマルチスレッドベンチマークの定番「CINEBENCH R15」のスコアを確認しておこう。こちらも比較対象として以前計測を行ったRyzen 7 1800Xと、Ryzen Threadripper 1950Xのスコアを合わせて記載している。
シングルコアテストのスコアを確認すると唯一100cbを下回るイマイチな結果。これはテストの負荷が軽すぎるためクロックが最小の1.2GHzからほとんど変わらないため。一方、マルチコアテストでは、動作クロックが2.20GHzと最も低いにも関わらず、Ryzen 7 1800Xとの比較では約2.1倍、Ryzen Threadripper 1950Xとの比較でも約1.2倍と圧倒。32コア/64スレッドの力を遺憾なく発揮する。
なお搭載グラフィックスカードなど、システム構成がまったく違うため参考程度にとどめてほしいが、消費電力はアイドル時が56.1W、高負荷時でも最高207.8Wで頭打ち。TDP180WとされるCPUとしては意外なほど低く、電源ユニットに関しては8pin×2さえあれば、比較的容量の少ないものでも問題なく動作させることができる。
32コア/64スレッドに対応するAMDの新サーバーCPU EPYC。Ryzen/Ryzen Threadripperで実証済みの「Zen」アーキテクチャを採用していることもあり、コンシューマ向けのアプリケーションでも圧倒的なマルチスレッド性能を発揮。さらにx86系CPUの中では最高峰の帯域幅を実現する8チャネルのメモリスロットや、128レーンにおよぶPCI-Express3.0は、“シングルCPUでデュアルCPU並の性能を”の謳い文句通りの仕上がりだ。
そんなEPYCの性能を最大限に引き出すようデザインされたGIGABYTE「MZ31-AR0」。メモリスロットや拡張スロットはCPUの限界まで利用可能。また厳選されたコンポーネントで構成された堅牢な電源回路や基板設計により、安定性も抜群。今回のテスト中において一度も不安定な挙動をみせることはなかった。
CPUの単体入手が難しいこと、さらにサーバー向け製品ということもあり、まずはシステムインテグレータやソリューションプロバイダー向け案件を中心に展開をしている模様。今のところ従来製品同様の販路での発売は未定ということだが、圧倒的なマルチスレッド性能や広大なメモリ帯域はコンシューマユーザーでも魅力的に感じる人は少なくないはずだ。
CPUの入手性が改善された後でも遅くはないので、ぜひPCパーツショップでも販売を検討してほしい。またGIGABYTEには、コンシューマ向け機能を搭載したワークステーション用EPYCマザーボードのリリースにも期待したい。
協力:日本ギガバイト株式会社