エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.616
2017.12.01 更新
文:エルミタージュ秋葉原編集部 池西 樹
センサータイプの温度計を右から2番目のMOSFETに貼り付けて温度を計測した |
テストセッションのラストは、「X299 Taichi XE」で強化されているという電源回路の冷却性能をチェックしていこう。温度計測はセンサータイプの温度計を使用。比較対象には、先代モデル「X299 Taichi」を用意し、動作クロックは定格とコア倍率を40倍(4.00GHz)にオーバークロックした状態で測定を実施した。なおストレステストには「OCCT 4.5.2」を使い、30分経過した時点での温度を高負荷時、起動してから10分間放置した際の温度をアイドル時とした。
省電力機能により電力消費が抑えられるアイドル時は、動作クロックやマザーボードによる違いもなく32℃台で横並び。また高負荷時でも定格動作であればその差は2.7℃とわずか。温度も50℃半ばまでしか上がらず、冷却性能にもまったく問題はない。一方、4.00GHz駆動時は「X299 Taichi XE」では定格から+9.0℃の62.2℃で抑えられているのに対し、「X299 Taichi」では+15.8℃の71.7℃まで上昇。Core Xシリーズのハイエンドモデルでオーバークロックを検討しているなら「X299 Taichi XE」がオススメだ。
定格動作時の「X299 Taichi XE」のサーモグラフィー結果 | 4.00GHz時の「X299 Taichi XE」のサーモグラフィー結果 |
定格動作時の「X299 Taichi」のサーモグラフィー結果 | 定格動作時の「X299 Taichi」のサーモグラフィー結果 |
サーモグラフィの結果を確認すると、最も温度の高いポイントは定格動作時が「X299 Taichi」の67℃に対して、「X299 Taichi XE」は64.3℃、4.00GHz駆動時は81.6℃に対して74.5℃で、MOSFETの温度測定と傾向は同じ。ヒートパイプで連結された2ブロック構成のヒートシンクを搭載する「X299 Taichi XE」は、確実に冷却性能が向上している。
最後に「CINEBENCH R15」のスコアとストレステスト「OCCT 4.5.2」実行中の消費電力の違いを確認しておこう。「CINEBENCH R15」のスコア差は、いずれも1%未満で誤差の範囲。電源回路の発熱によるボトルネックもなく、今回チェックした限りではCPUの性能に影響は見られなかった。また消費電力はアイドル時は約2W、高負荷時は約5W「X299 Taichi XE」が高いものの、こちらもその差は約1%。個体差の範囲内で、無視して構わないだろう。
フラッグシップモデルCore i9-7980XEをはじめとした、TDP 165WのCore Xシリーズをターゲットに投入された「X299 Taichi XE」。その謳い文句通り、電源回路の冷却性能は確実に向上。特にオーバークロック時の効果はとても大きく、独自BCLKエンジン「Hyper BCLK Engine III」を含めた極限チューニングを検討しているなら、まさに最良の選択だろう。
電源回路を強化した「X299 Taichi XE」なら、コストを抑えつつCore Xハイエンドモデルの極限チューニングに挑戦できる |
もちろん先代モデルで定評のあった信頼性・安定性を重視した設計や、ハイエンドに匹敵する多機能ぶりは継承。13フェーズにおよぶ堅牢な電源回路や、3基のM.2スロット、チーミングに対応するデュアルギガビットLANなどハイエンドマザーボードと遜色ない機能を備え、Core Xシリーズの持つ魅力を余すことなく引き出すことができる。
一方、定格運用やライトなオーバークロックなら冷却性能の影響はわずか。搭載機能や基本設計も変わらないため、「X299 Taichi XE」の登場により大幅に価格が下がった「X299 Taichi」も狙い目といえる。自分のシステムに合わせて賢く選択してほしい。
協力:ASRock Incorporation