エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.637
2018.02.17 更新
文:エルミタージュ秋葉原編集部 池西 樹
メインメモリの一部をビデオメモリに割り当てるRyzen 2000Gシリーズ。メモリクロックがグラフィックスのメモリ帯域に直接影響するため、パフォーマンスの違いは気になるところ。そこで本項では2,666MHzの他、2,933MHzと3,200MHzの3段階のクロック設定によってどの程度グラフィックス性能がアップするのかチェックしておこう。
Ryzen 5 2400Gが正式対応する2,933MHz(画像左)はもちろん、3,200MHz(画像右)でもまったく問題なく動作する |
Intel製CPUでは、同一世代でもランクによってメモリコントローラの性能が異なるが、Ryzen 2000Gシリーズは下位モデルでも変化なし。いずれのクロックでも問題なく動作した |
2,666MHzと2,933MHzではRyzen 5 2400Gが約9%、Ryzen 3 2200Gでも約8%とほぼクロック通り。2,933MHzと3,200MHzでは、差が縮まりいずれも約3%に留まるが、高クロックメモリの恩恵は確実にある。CPUやグラフィックカードに比べると体感速度への影響小さいことから、これまであまりメモリクロックにはこだわっていなかったという人も多いだろう。しかしRyzen 2000Gシリーズで内蔵グラフィックスを使用するなら、予算が許す範囲で高速なメモリをチョイスしたい。
最後にグラフィックスコアの消費電力を確認しておこう。測定は起動直後10分間何もせず放置した際の最低値をアイドル時、「3DMark:Fire Strike Stress Tests」実行時の最大値を高負荷時に設定。“Wattup Pro”を使用して消費電力を計測している。
まずメモリクロックの違いによる消費電力差を確認するといずれも1W未満で、ほとんど誤差の範囲。高クロックメモリ導入による電力増はほとんど考慮しなくても良さそうだ。またCore i5-8400との比較では、Ryzen 3 2200Gで8.4W、Ryzen 5 2400Gでは13.3W増加。前回検証した「CPU編」では、それぞれ-23.8W、-9.4Wの差があったことから、CPU/GPUの双方に負荷が掛かる処理ならRyzen 5 2400Gでは約4Wと微増。Ryzen 3 2200Gでは、約15Wほど少ない計算だ。
Coffee Lakeの登場により、CPU性能ではやや厳しい戦いを強いられたRyzen 2000Gシリーズ。しかし、AMD最新世代「Vega」アーキテクチャを採用するグラフィックス性能は、Intelの最新内蔵グラフィックスIntel UHD Graphicsとの比較でも安定して約2倍、ベンチマークによっては3倍近いスコアを叩き出すなどまさに圧巻。フルHD解像度までなら、一部の重量級ゲームを除けば高画質設定でも快適に動作させることができ、エントリークラスからメインストリーム下位のグラフィックカードを駆逐する勢いだ。
さらに少々コストは掛かるが高速メモリを組み合わせれば、パフォーマンスのさらなる上積みも可能。高性能GPUを内蔵しているにもかかわらず、消費電力も控えめで、電源ユニットや冷却に掛かるコストも抑えることができる。グラフィックスカード用のPCI-Express3.0が8レーンに削減されているのは気になるところだが、NVMe SSD用の4レーンは確保されており、オンボードグラフィックスを前提としたPCであれば大きな問題にはならないだろう。
期待通りのグラフィックス性能を発揮したRyzen 2000Gシリーズ。内蔵グラフィックスを使い、コストを抑えたいなら最有力候補となるプロセッサだ |
昨年3月にリリースしたRyzenシリーズまで、永らく苦戦が続いていたAMD。しかしそれ以降にリリースしたCPUおよびAPUはいずれも期待通り(もしくはそれ以上)のパフォーマンスを発揮する秀作揃い。順調なら今年4月にも登場が予定されている“次世代Ryzen”にも大いに期待したい。
協力:日本AMD株式会社
ASUS JAPAN株式会社