エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.659
2018.05.21 更新
文:エルミタージュ秋葉原編集部 絵踏 一
さて、ベンチマークテストによるパフォーマンスチェックが一段落したところで、テスト中における「G-Master Spear X470A」の挙動を冷却面からチェックしていこう。Ryzen 7 2700X用の純正クーラー「Wraith Prism」、そして「STRIX-GTX1060-DC26G」が搭載するデュアルファンクーラーは、負荷がかかった環境でどのように働いてくれるのだろうか。それぞれベンチマークテスト動作時の挙動を「HWmonitor」で計測した。
まずCPU冷却の方から見ていくと、ゲーミングベンチでは最大71℃、CPU特化のストレステスト「CINEBENCH R15」では最大75℃までCPU温度が上昇した。さすがにベンチマーク中にはファンの動作音も耳に届いてくるものの、騒音というほど大げさではない。ゲームプレイの邪魔にならない程度に動き、しっかり許容範囲内の温度を維持してくれている。
そしてもう一方のGPU温度は、どの環境でも70℃未満に収まった。デュアルファンを備える「DirectCU II」クーラーの回転数は1,900rpm前後と稼働率60%程度、だいぶ余裕を残していることが分かる。さらに低負荷時にはファンを停止するセミファンレス機能により、普段使いでは騒音源にならない点も好印象だ。
なお、採用ケースの「CM 690 III」はエアフローに優れたモデルであることから、クーラーの冷却効率も最大限に発揮できる。どのような構成であっても、冷却面に関してはまず心配する必要はなさそうだ。
テストセッションの締めくくりとして、最後に「G-Master Spear X470A」の消費電力を確認する。各種ベンチマーク動作時の最大値と、10分間放置した際の最小値それぞれをワットチェッカーで計測した。
アイドル時はわずか51Wとかなり低く、最大値をマークした「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION」でも254Wに収まった。CPU向け「CINEBENCH R15」とグラフィックス向け「3DMark」での挙動をみるに、どちらかといえばCPUパワーが要求されるシーンで消費電力が上昇する傾向があるようだ。
もっとも「G-Master Spear X470A」は標準で750Wの電源ユニットを搭載しており、余裕はたっぷり。カスタマイズを考える際も、消費電力が足かせになることはないだろう。
デュアル水冷マシンに代表される、オンリーワンなBTOマシンを手がけることに定評のあるサイコム。これまでも代表的シリーズである「G-Master Hydro」を中心に、多数の独創的なモデルを検証してきた。ところが今回の主役に抜擢されたのは、ド定番なベストセラーケースに身を包んだミドルレンジのゲーミングマシン。いかにいま自作市場を騒がせている第2世代Ryzen搭載モデルであろうと、結局は“普通なBTO”になるのではないか。その懸念は、カスタマイズメニューを探検し、届いた検証機のサイドパネルを開けてアレコレ眺めている内に、すっかり払拭されることになった。
サイコムのBTOが自作派(あるいは元自作派)にとって支持されるのは、やはりこだわりの自作パーツをとことん吟味できる点にある。名前の見えないBTO向けのOEMパーツで構成された“工業生産品”ではなく、ユーザー自身が選んだパーツでPCが出来上がる。自作の延長線上でオーダーするスタイルは、尖ったスペックや装備をもたないミドル志向のマシンであっても、まったく変わらないというワケだ。
話題の第2世代Ryzenでイマドキゲームをリッチに遊びたい。そんなニーズに応えつつ、まるで自作を楽しんだような満足感も得られる。定番パーツを組み合わせたミドル級モデルでも、やはり“サイコムのBTO”なのだ |
そんな自作風の感覚で出来上がる、第2世代Ryzenベースのお手頃なゲーミングマシン。それが「G-Master Spear X470A」だ。ショップの棚を眺めるような風情でオプションを見繕い、自作を楽しむかのごとくカスタマイズを堪能。憧れのRyzen 7 2700Xや、トレンドを押さえたパーツを贅沢に盛り込んだ評価機でも、プラス40,000円程度の税込185,570円(5月17日現在)に収まった。
そして厄介な工程は職人におまかせ、なんともコストパフォーマンスの高い買い物といえる。第2世代Ryzenを搭載するスタンダードなゲーミングBTOの中でも、いま最も気分よく手にできるモデルではないだろうか。
協力:株式会社サイコム