エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.678
2018.08.13 更新
文:テクニカルライター・藤田 忠
最後は第2世代Ryzenでサポートされた電力制限などの上限を取り払って自動でオーバークロックする「Precision Boost Overdrive」を使ってみた。
設定はThreadripper 2対応の「RYZEN MASTER」にある「Control Mode」の項目から「Precision Boost Overdrive」を選択。ロックフリー「PPT」(Package Power Target)、「TDC」(Thermal Design Current)、「EDC」(Electrical Design Current)を設定すればいい。
Threadripper 2は第2世代Ryzenの新機能である「Precision Boost Overdrive」をサポート | 「Precision Boost Overdrive」を選択し「PPT」を750Wなど上限に設定 |
大雑把に各項目を設定できる上限値に設定してためしてみると、全コア4GHzでの動作に成功。さすがに常用時はマザーボードからの手動設定が必要だと思われるが、「CINEBENCH R15」は問題なく完走し、「5,842cd」という強烈なスコアを記録した。
オーバークロック設定時の「CINEBENCH R15」の結果。マルチコアのスコアは定格運用時から600スコアアップした「5,842cd」を記録 | 動作クロックは全コア4GHz前後で動作していた |
なお、このオーバークロック時の消費電力はすさまじく、瞬間的には759.8Wを記録。ベンチマーク中はおおむね630W程度になっていた。グラフィックスカードに負荷をかけるテストは行っていないが、ハイエンドGPUでは1,000Wオーバーもありそうだ。
ベンチマークテスト「CINEBENCH R15」で“5,000cd”オーバーというインパクト絶大なスコアを叩き出すなど、32コア/64スレッドのマルチスレッドCPUとなった「Ryzen Threadripper 2990WX」。高パフォーマンスだけでなく、64スレッド動作時でも400W程度に収まる消費電力性能、さらに360mmサイズラジエターのオールインワン水冷ユニットなら静音性を維持しつつ冷却が可能で、思いのほか発熱量が抑えられていた。
64スレッドの高パフォーマンスをフルに引き出せるかは用途次第だが、単体販売がされていないサーバー向けのEPYCとは異なり、64スレッドのモンスターCPUを手にできるという事実は自作ユーザーの心を大いにくすぐる。そのうえ、オーバークロックや用途に合わせたコア数制御、メモリアクセスモードの選択(Ryzen Threadripper 2950X)と遊べる要素も魅力だ。
これまで、メニーコアマシンを構築するには、どうしてもマザーボードやメモリといったパーツが割高だった。それが「Ryzen Threadripper 2990WX」の登場により、導入のハードルが一気に下がった点は大きい。「Ryzen Threadripper 2990WX」がハイエンドCPUの新たな有力候補となるはずだ。
協力:日本AMD株式会社