エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.711
2019.01.12 更新
文:エルミタージュ秋葉原編集部 松枝 清顕
魅力あふれるPCケース「ENTHOO EVOLV X GLASS」は、デュアルシステムの構築ができるように設計されている。想定用途をPhanteksに尋ねてみたところ、2枚のマザーボード(2つのCPU)を搭載する事で、ストリーミング環境または、ホームサーバーの構築が可能。これまで大掛かりになりがちだったシステムを、1つの筐体で賄おうという考えだ。
「ENTHOO EVOLV X GLASS」購入者がこの環境を実際に作り上げる割合は恐らく限定的と思われるが、第2マザーボードとなるMini-ITXは手頃な価格から入手が可能。明確な目的がないままに”作ってみたい”という欲求が勝る事も十分にあるだろう。
昨年6月に台湾で披露されたプロトタイプには、デュアルシステムが構築されていた。Mini-ITXマザーボードが天板背面寄りに吊り下げられている様は大いに自作魂をくすぐる仕掛けだ |
なおデュアルシステムを実現するためには「ITX Upgrade Kit」(型番:PH-ITXKT_02)が必要だが、株式会社アイティーシーが扱う日本国内流通品は「日本専用パック仕様」として出荷時より本製品に同梱されている。
本来はオプション扱いのところ、国内流通モデルでは標準装備品となる「ITX Upgrade Kit」。Mini-ITXマザーボードをマウントする台座で、PowerスイッチとPowerLEDのピンヘッダ接続用ケーブルが装備されている |
そしてデュアルシステムを実現させるために必須なのが、専用の電源ユニット。先に搭載を試みた「REVOLT X PSU」(型番:PH-P1200PS/市場想定売価税抜39,800円)は、ATXメイン出力を2系統備えた専用モデルだ。1システムだけ電源をカットする機能や、135mm口径ファンの回転モードが制御できるボタンを背面に装備。Seasonicと共同開発した80PLUS PLATINUM認証取得品で、製品には12年の保証が提供される。さて、デュアルシステム構築の準備が整ったところで、実際に搭載を試してみよう。
「ITX Upgrade Kit」にマザーボードをマウント。一般的な搭載手順同様、背面にバックパネルを装着し、4本のネジで固定。PowerスイッチとPowerLEDのケーブルも接続しておこう |
4本のミリネジで天板後方に「ITX Upgrade Kit」を固定。CPUクーラーはメインシステムのCPUクーラーとスペースを分け合う事になるため、おおよそ高さ60mm以下のロープロファイルモデルを選びたい |
搭載には背面に2本のネジで固定されている「ITX BRACKET」を取り外す。またリア左上にあるのが第2マザーボードのPowerスイッチ。ちなみにトップ部の残りスペースには120/140mm口径ファン1基であれば増設が可能。メインマザーボードと共にデュアル水冷を構築する事も可能だ |
「REVOLT X PSU」はさすがに専用品とあって、ATXおよびCPUケーブルの長さも十分に確保されていた。第1、第2マザーボード共にストレスなく配線ができる事が分かった |
外観こそシンプルに見える「ENTHOO EVOLV X GLASS」。だがPhanteksならではの”こだわりの設計”を、ひとつずつ丁寧に紐解くにはかなりの時間を要した。製品名から従来モデルの派生形と高をくくっていたが、細部を見ていくうちにほぼゼロベースで設計をやり直している事が想像できる。
多くのPCケースに触れていると、自社設計のメーカーに限ってはおおよその癖や、設計思想、デザイナーの考え方がぼんやりと分かるようになってくる。中でもPhanteksは最もメーカー色が濃く、筐体内に全てを詰め込んでくる。「ENTHOO EVOLV X GLASS」はどこをとってもPhanteksであり、あらゆる箇所で手を抜いた形跡が見当たらない。妥協無き完成度の高さは、ほぼ満点の出来と言っていいだろう。強いて言うなら付属のライザーケーブルが長すぎるくらいだ。
通常よりも2倍の時間を要して検証を終えた今の感覚は、ランナーの中にギッシリとパーツが詰まったプラモデルを作り上げた時のそれに似ている。しかしながら、せっかく組み上げた完成品は、まもなく解体しなくてはならない。もう少し手元に置いておきたい。「ENTHOO EVOLV X GLASS」はそう思わせる秀作だった。
協力:Phanteks
株式会社アイティーシー