エルミタ的一点突破 Vol.49
2019.02.04 更新
文:エルミタージュ秋葉原編集部 松枝 清顕/池西 樹(テストセッション)
マニュアルに準拠した搭載方法を解説したところで、隣接するメモリスロットのクリアランスと共に、「搭載方向」について触れておきたい。
マニュアルに詳細は明記されていないものの、設計上「大手裏剣参」はどの方向にも搭載が可能だ。ここで言う”方向”のポイントはヒートパイプの事を指す。
このモデルに限らず、CPUクーラーには最大限に冷却能力が発揮できる搭載向きというものが存在する。タワー型デスクトップPCへの搭載(マザーボードが設置面に対して垂直状態)を基準とし、ヒートパイプのアール(膨らみ)が上向きになる状態は、一般的に冷却能力が落ちるとされている。
マニュアルに記述は見当たらないが、図説通りに搭載するとヒートパイプの向きは下方向になる |
この熱源に対するヒートパイプのレイアウトについては、”ボトムヒートとトップヒート”というセオリーがあるワケだが、前出サイズのS氏によると「大手裏剣参」はどの方向に設置しても「冷却能力に大きな差はでなかった」という。
こと「大手裏剣参」のような小型CPUクーラーの場合、大型のCPUクーラーに比べて冷却能力に余裕が無いため、高負荷時における搭載向きによる性能差は出にくいのかもしれない。そんな「大手裏剣参」の特性を把握したところで、ヒートパイプの向きを変えた2パターンの設置方法による、メモリスロットクリアランスを見ていこう。なお検証に使用したメモリはヒートスプレッダ非装着で、高さは31mmだった。
(1)ヒートパイプの膨らみを下方向に設置した場合 |
(2)ヒートパイプの膨らみを上方向に設置した場合 |
セオリーを無視した(1)の搭載方向では、ヒートシンクの一部(2本分)がメモリスロットに被さる状態になる。装着後のメモリスロットクリアランスを計測すると、それでも約6mmのマージンが確保できている。考え方だが、トップフローの恩恵により、メモリの一部に直接風が当たるため、これをメリットとして捉える事もできるだろう。
一方でマニュアル準拠(2)の搭載方向では、メモリスロット上空が完全にクリア状態となり、大型ヒートスプレッダが装着されたメモリでも物理的に干渉する心配が無くなった。
この状態をイレギュラーとするかは意見の分かれるところだが、理論値と実際の運用を切り離す柔軟さはあっていいだろう。基本的なルールさえ守れば、自作PCは自由に楽しめばいい。