エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.739
2019.05.20 更新
文:エルミタージュ秋葉原編集部 絵踏 一
ユニークなサラウンドデバイスの後続として開発された「AERO」は、ある意味でイヤホンの常識に挑戦するモデルだった |
まず「AERO」が最大のコンセプトとして掲げたのが、「ゲームにも音楽にも使えるイヤホン」であること。通常ゲーミング用となればそれに向いた音質を求め、音楽向けならターゲットになるジャンルの音楽に合うイヤホンを設計することになる。しかし実際にユーザー側でそうした用途別の使い分けを行うことはまれなため、「用途を限定しない、真に汎用性に優れたイヤホン」を目指したというワケだ。
その難しいミッションに挑むため、「AERO」には複数の独自技術が使われている。空気力学に基く特許取得の3Dチューニング材には、多数の微細な球体で構成されるポリマー素材を採用。音波が自然に散らばることで瞬時に最大のダイナミズムを生み出すとともに、高低音のバランスを最適化、よりなめらかでクリアな音の表現を狙った。
コア技術である3Dチューニング材を含め、空気力学の技術が多様されている。ハウジング内部を流れる気流もまた、音質のために計算されているというワケだ |
また、空間感の表現において重要な高音域のエネルギーを逃さぬよう、やはり空気力学の原理を利用した「VORTEX ACOUSTIC DAMPING設計」を採用。ハウジング内部の空気の経路を伸ばすことで、よりクリアで伸びのよい高音域を再現する仕組みだ。
さらに音を直接耳に反射するノズル部分には、特許を取得したSPCCクロム鋼のメタルノズルを用いる。一般的な樹脂製ノズルは表面に小さな凹凸ができる仕様上、音がきれいに反射されない。そこで高周波(高音域)の99.9%を反射・伝達可能なメタルノズルを採用することで、歪みを抑えたクリアな音を再現。「目の前に音の光景が広がる」ような臨場感の演出が可能という。
ほぼ原音そのままを反射させるメタルノズルは、理想的な音質を追求するための決め手の一つになったという |
そのほか、8mm口径のドライバーを搭載。振動板には、靭性に優れたPETに高硬度なチタンをコーティングしたチタンメッキPET振動板が使われている。また、ボイスコイルを通常(内磁型)の4倍の制御力をもつ外磁構造とすることで、サイズ感を変えることなく入力信号に対する感度を高めた。20~40kHzの広帯域をカバーし、ハイレゾにも対応している。
残響音を重視した3次元チューニングにより、迫力と臨場感を両立させる音作りを追求した |
そしてイヤホンとしての仕上がりに直結するサウンドチューニングは、「残響音(リバーブ)のタイムスピード」を特に重視。音の響きが消えるまでのタイムスピードや広がり感、オリジナルとリバーブとの兼ね合いといった要素を緻密なチューニングで追い込んだ。平面ではなく3次元のCSD図面をベースに調整を行い、より明確な方向感を伴う高音域、粒立ちのよい中高音域、シャープな低音域に仕上げている。
ユニークなコア技術や採用例の少ない高品質コンポーネント、緻密なチューニングに至るまで。かなりのこだわりが詰まったイヤホンであることが分かるだろう。