エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.764
2019.08.11 更新
文:エルミタージュ秋葉原編集部 絵踏 一
ここからは、実際のゲームシーンを想定し、オンラインゲームのメジャータイトルである「ファイナルファンタジーXIV:漆黒のヴィランズ」のベンチマークテストを実行する。グラフィックス設定は「最高品質」で解像度は3,840×2,160ドットにセット、これまで同様に30分間ループでベンチマークを走らせた際の挙動をチェックしよう。
消費電力は最大392Wと、それなりに大きな負荷がかかった。グラフの波形を確認すると、このテストでは微細な変動が確認できる。しかし+12Vは最大12.000Vと最小11.904Vの範囲から外れることはなく、一貫性のある挙動を示してくれた。また、変動があるとは言え、最大/平均値の差はわずか0.056V。どれほど小さな変動幅に収まっているかが分かるだろう。
最後は実際の「Battlefield V」をプレイし、ゲームプレイ時の挙動を確かめる。搭載グラフィックスカードの関係でレイトレーシング系機能は使用できないが、描画品質を“最高”に、解像度を3,840×2,160ドットに設定することで、かなりヘビーな負荷がかかる。プレイにはシングルプレイヤーモード「大戦の書」の「最後の虎」を選択し、30分間動作させて計測を行った。
最大消費電力は366Wをマークするなど、860Wモデルの電源ユニットとして十分な余裕を残す負荷がかかった。まずポイントになるのは、極めてフラットなグラフの波形だ。突発的に負荷が上昇することも多いゲームプレイ時の挙動とは思えないほど、凪いだ波形を示している。また、+12Vの最小値は11.808Vとこれまでより落ち込みが大きいものの、平均値は最も変動幅が少ない11.973V。電圧の落ち込みは一瞬のことであり、それ以外はほぼ最大値に張り付いて動作していることが分かる。
Fractal Designとしては久しぶりとなる電源ユニット製品だけに、「Ion+ Platinum」はじっくり準備されてきたであろう、完成度の高さを感じさせる。80PLUS PLATINUM認証製品では珍しい低容量モデルの充実もまた、昨今の自作事情を色濃く反映するものだ。いたずらに大容量の電源ユニットを搭載する意義が薄れつつある中で、低容量の高効率モデルを求める需要は確実にある。これからの電源ユニット市場において、注目を集める製品になることは間違いないだろう。
そしてテストマシンを組み上げる際に実感したのは、Fractal Designが自慢の新要素に挙げる「UltraFlexケーブル」の使いやすさだ。破格の柔軟性を持つ、大型ケースでも無理なく取り回せるロングケーブルは、配線の難易度を大きく下げてくれる。ショートデザインの筐体もケーブルを取り回す上で有利なポイントであり、このあたりのこだわりは、いかにもケースメーカーといったところ。“本業”のノウハウがうまい具合に落とし込まれている。
もちろん電源ユニットとしての性能も申し分なく、日本メーカー製コンデンサ採用の信頼性やブレのない一貫した出力特性は、出色のものだ。ユーザーの選択肢を広げてくれる、セミファンレスの有無を選べる冷却コンセプトも好感度が高い。前述の希少な容量ラインナップという要素と合わせれば、80PLUS PLATINUM認証製品のキラーモデルになっても驚かないだろう。
協力:Fractal Design
株式会社アスク