エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.800
2019.11.25 更新
文:エルミタージュ秋葉原編集部 池西 樹
定番の3Dレンダリングベンチマーク「CINEBENCH R15/R20」を使い、まずはCPUの純粋なパフォーマンスをチェックしていこう。
「CINEBENCH R15」のシングルコアテストは、Core i9-9900Kの216cbに対して、Core i9-10980XEは205cbでその差はわずか5%。それぞれの最高クロック(5.00GHzと4.80GHz)の差に近い結果で、コア数が2倍以上に増えているメニーコアCPUとしてはかなり健闘している。またマルチコアテストでは、18コア/36スレッドの強みを活かし、Core i9-9900Kの約1.8倍にあたる3,695cbを記録。メインストリーム向けのCPUとの差別化もしっかりとできている。
より負荷の大きい「CINEBENCH R20」の結果を見ると、シングルコアテストは最大クロックを維持できる時間が短いためその差は約7%に拡大した。またマルチコアテストでは1.77倍へと若干差が縮まっているが、それでもCore i9-9900Kを完全に圧倒するパフォーマンスを発揮する。
「HEDT」プラットフォームを導入するメリットの一つにクアッドチャネル動作による広大なメモリ帯域幅がある。そこで「Sandra 20/20」を使い、メモリ帯域をチェックしておこう。なおCore i9-10980XEのメモリクロックは、メモリの定格である2、666MHzとXMPプロファイルである3,200MHzの2種類で計測を行った。
メモリの定格設定である2、666MHz(左)はもちろん、XMPプロファイルの3,200MHz(右)でもクアッドチャネルで問題なく動作させることができた |
クアッドチャネルの効果は大きく、2,666MHzでもCore i9-9900Kの約1.67倍、3,200MHzでは60GB/秒に迫り、Core i9-9900Kとの差は約1.77倍に達した。最近では高速メモリも比較的手頃になっているため、Cascade Lake-XでPCを組む場合(またはアップグレード)は、ぜひメモリも高クロックなものを選択したい。
最後に消費電力を確認していこう。高負荷時は「CINEBENCH R20」実行時の最高値、アイドル時は起動後10分間放置した際の最低値をそれぞれ採用している。
アイドル時の消費電力は、Core i9-9900Kの49.7Wに対して、Core i9-10980XEは85.6Wで約35Wも多い。CPUコアが2倍以上もあるため、アイドル時の消費電力を抑えるのは難しいようだ。また高負荷時は、Core i9-9900Kの261.5Wに対して、323.2Wでその差は約60W。マルチスレッドが中心の処理ならCore i9-9900Kより電力効率は間違いなく優秀だ。
ここまで「Core i9-10980XE」のファーストインプレッションをお届けしてきた。マルチスレッド性能は、メインストリーム向けハイエンドであるCore i9-9900Kの約1.8倍で、18コア/36スレッドのメニーコア構成らしいスコア。さらにクアッドチャネル対応による広大な帯域幅も、マルチスレッド処理を中心に行うユーザーには魅力的なポイントになるだろう。
また「Turbo Boost Max Technology 3.0」の改良によって、シングルスレッド処理もその差は約5%とわずか。これまで苦手としていたゲームやオフィスアプリでも十分な性能を発揮してくれる。
AMDから16コア/32スレッドの第3世代Ryzenや、32コア/64スレッドのRyzen Threadripperが登場しているため、ややインパクトに欠ける面はあるものの、Intelのコンシューマ向け製品では間違いなく最高峰 |
それでいて価格はこれまでの約2分の1に抑えられていることから、Cascade Lake-Xは「HEDT」の入門プラットフォームとして有望な選択肢になりそうだ。さらに現在Skylake-X/Skylake-X Refreshの下位モデルを使っているユーザーのアップグレードパスとしてもオススメだ。