エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.801
2019.11.25 更新
文:エルミタージュ秋葉原編集部 池西 樹
定番の3Dレンダリングベンチマーク「CINEBENCH R15/R20」を使い、CPUの純粋なパフォーマンスをチェックしていこう。
まず「CINEBENCH R15」のスコアを確認すると、これまでRyzen Threadripperが苦手としていたシングルコアテストは、Ryzen 9 3950XやRyzen 9 3900Xにあと一歩まで迫る209cbを獲得。「Zen 2」アーキテクチャによる改善はRyzen Threadripperでもしっかりと活かされている。またマルチコアテストは、Ryzen 9 3950Xより約45%、Ryzen 9 3900Xとの比較では約85%も高速だ。
続いて「CINEBENCH R20」のスコアも確認していこう。シングルコアテストは、「CINEBENCH R15」よりさらに差が縮まり、Ryzen 9 3950Xとほぼ同等、Ryzen 9 3900Xとの差もわずか4ptsで誤差の範囲だ。マルチコアテストは、「CINEBENCH R15」と同じくRyzen 9 3950Xとの差は約45%、Ryzen 9 3900Xの差は約85%だった。実際のコア数に比べると若干差は小さいが、いずれもマルチコアテストでは、24コア/48スレッドのパワーが遺憾なく発揮されている。
代々Ryzenシリーズが得意としているメモリの帯域だが、Ryzen Threadripper 3960Xではさらにクアッドチャネルに対応しており、メインストリームとは一線を画すパフォーマンスが期待できる。そこで「Sandra 20/20」の「メモリの帯域」を使い、メモリ帯域幅を確認していこう。
今回の検証では3,200MHzの高速メモリ使っているため、デュアルチャネルの第3世代Ryzenシリーズでも40GB/秒に近い良好な結果。さらにRyzen Threadripper 3960Xでは「整数メモリ帯域」「浮動小数点メモリ帯域」とも8割以上高い70GB/秒を記録した。同時処理の作業が増えるに連れ、メモリ帯域は不足しがちなため、特にマルチスレッドに最適化されたアプリケーションや、レンダリング、エンコードなどの重い処理を並列で行う場合には、第3世代Ryzen Threadripperの導入を検討するといいだろう。
最後に消費電力を確認していこう。高負荷時は「CINEBENCH R20」実行時の最高値、アイドル時は起動後10分間放置した際の最低値をそれぞれ採用している。
アイドル時の消費電力はRyzen 9 3950Xとの比較で約16W増、Ryzen 9 3900Xとの比較でも約19W増で、コア数やシステムの規模を考えれば納得できる数値。一方、高負荷時の消費電力はTDPの差(180W)を上回る約200W増となかなかインパクトのある結果。元々消費電力を気にする層をターゲットにした製品ではないが、冷却システムや電源ユニットはなるべく良いものを選択する必要がある。
時間的な制約もあり、詳細なテストを行うことはできなかったが、マルチスレッド処理については、下位に位置づけられるRyzen Threadripper 3960Xでも、メインストリーム向け最高峰のRyzen 9 3950Xを完全に圧倒。よりコア数の多い上位モデルRyzen Threadripper 3970Xや、来年登場予定の最上位Ryzen Threadripper 3990Xの性能についても大いに期待が持てる。
そしてこれまでRyzen Threadripperが苦手としていたシングルスレッド処理も、「Zen 2」アーキテクチャによるIPC・動作クロックの向上や、L3キャッシュの拡張によって大幅な改善が見られた。PCI-Express4.0の対応や合計88レーンの豊富なPCI-Expressによるメリットについては、今後さらなる検証が必要だが、少なくとも性能面での不満はおおむね解消されたと言って良さそうだ。
唯一残念なのが、外観上はソケット形状等に変更がないにも関わらず、Socket TR4(およびAMD X399チップセット)との互換性がなくなってしまったこと。第3世代Ryzenシリーズは、一部機能に制限はあるがAMD 300/400シリーズ(AMD 300シリーズはAMD非公認)のチップセットでも動作させることができた。ハイエンドプラットフォームということで、性能面での妥協が難しいという判断だったのかもしれないが、Socket TR4マザーボードは高品質・高機能な製品が中心だったため、たとえ一部の機能に制限があったとしても互換性を維持して欲しかった。
協力:日本AMD株式会社