エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.806
2019.12.09 更新
文:エルミタージュ秋葉原編集部 絵踏 一
Fractal Design「ION SFX 650G」 市場想定価格税抜18,000円前後 製品情報(Fractal Design)(株式会社アスク) |
今夏に久しぶりの電源ユニット「Ion+ Platinum」シリーズを投入したFractal Designから、またもや注目の製品が登場した。それが今回の主役である「Ion SFX」シリーズ。スモールフォームファクタ向けのSFX-L規格を採用する、80PLUS GOLD認証の小型電源ユニットだ。
電源市場への“復帰作”としてハイクラスのPLATINUM認証モデルを投入しながら、それに続く製品がSFX-L規格とは。なんとも“ツウ好み”な製品展開といえる。
11月に販売が始まった、Fractal DesignによるSFX-L電源ユニット「Ion SFX」シリーズ。自慢の“あのケーブル”を採用する製品として、発売前から期待する声が多かったモデルだ |
ちなみにこの「Ion SFX」シリーズだが、実は発売を予告するプレスリリース時点から店頭で大きな期待を集めていた。その最大の理由は、「Ion+ Platinum」シリーズでも採用されていた“超柔軟ケーブル”の「UltraFlexケーブル」だ。
専用設計の絶縁体を使用した高密度編み込みケーブルで、効率や電流容量を損ねずに導体をわずか直径0.08mmに抑えた仕様。数字だけではピンとこないかもしれないが、これは競合製品に比べ半分ほどの厚みであり、それによって構成されたケーブルは、およそ異次元と言っていい柔軟性に仕上がっている。
曲げもねじりも自在。もう電源ユニットのケーブルが硬いという“常識”は、この「UltraFlexケーブル」には通用しないと言っていいだろう。
「Ion+ Platinum」とともにデビューした「UltraFlexケーブル」。とても電源ユニットのケーブルとは思えない、圧倒的な柔軟性を誇るスグレモノだ |
引き続き、「Ion SFX」シリーズの電源ユニットたる仕様を確認していこう。電力変換効率87%以上の80PLUS GOLD認証を取得した製品で、ケーブルはすべてが着脱式のフルモジュラー仕様。フォームファクタは小型システム向けのSFX-Lだ。製品には変換ブラケットが付属し、ATXケースに組み込むこともできる。
ちなみにSFX-Lとは、従来のSFXから奥行きを30mm延長した派生規格のこと。奥行きが100mmから130mm前後へ拡張されたことで120mmファンが搭載可能になり、弱点でもあった冷却面の制約から解放された。コンパクトさと冷却性能、静音性を両立できるため、近年SFX級電源の新製品はSFX-L規格でリリースされることが増えている。
SFXから奥行きを延長し、120mmファンを搭載可能としたSFX-L規格の電源ユニット。フルモジュラー仕様のGOLD認証モデルで、セミファンレス動作に対応している |
そしてその冷却機構には、長寿命・低騒音なFDB(Fluid Dynamic Bearing/流体動圧軸受)を採用した15mm厚の薄型120mmファンを搭載。低負荷時にファン回転を停止するセミファンレス機能「Zero RPM」モードに対応しており、騒音を効果的に抑える仕様になっている。
また、搭載するコンデンサはすべて日本メーカー製の105℃品を採用。低ESRおよび低インピーダンスのコンデンサを組み込むことで、信頼性と耐久性を高めている。さらに35mV以下という低リップル動作に対応するほか、出力電圧の負荷レギュレーションにおける電圧変動幅を誤差0.3%以内に抑えるなど、高い安定性を謳う。MTBFは100,000時間で、保証期間は80PLUS GOLD認証クラス最高峰の10年間だ。
スモールフォームファクタ向けの電源ユニットとあって、パッケージ外形寸法は約W260×D98×H170mmと小さめ。背面には柔軟ケーブルやセミファンレス機能などの主な仕様について、簡単に記載されている |
なお「Ion SFX」シリーズの容量ラインナップは、500Wと650W。今回のレビューでは、最大容量の650Wモデル「ION SFX 650G」を借り受け、検証に使用している。