エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.810
2019.12.18 更新
文:エルミタージュ秋葉原編集部 池西 樹/撮影:松枝 清顕
テストセッションのラストは「UEFI BIOS」からコア電圧と倍率のみを変更する簡易チューニングで、どこまでクロックを引き上げることができるのかチェックしてみよう。使用するベンチマークは「CINEBENCH R15」「CINEBENCH R20」の2種類。さらにストレステスト「OCCT 5.4.2:CPU:OCCT」を30分間実行した際のMOSFETの温度(マザーボードセンサー上のVRM MOSの値)とサーモグラフィーの結果も確認してみることにした。
今回は「UEFI BIOS」からCPUのコア倍率とコア電圧のみを調整する簡易的な手動チューニングを行った |
「CINEBENCH R15/R20」のマルチコアテスト時の結果。「CPU-Z」「HWiNFO64」とも4.70GHzで動作していることが確認できた |
今回のテストで使用したCPUでは、コア倍率47倍、コア電圧1.150Vの設定までならOSの起動、各種ベンチマークとも問題なく動作させることができた。またベンチマークの結果を確認すると、シングルコアテストでは定格時でも最高4.80GHzまでクロックが上昇するため、いずれも若干だがスコアが低下した。一方、マルチコアテストでは22%もスコアがアップし、その効果は非常に大きい。オーバークロックの伸びには個体差があるため、すべてのCPUでここまでクロックが引き上げられるわけではないが、マルチスレッド処理を少しでも高速化したいなら挑戦して見る価値は十分にある。
また消費電力を確認すると約100W増とかなり強烈な結果。「Cascade Lake-X」をチューニングをする場合には、「X299X AORUS MASTER」のようなあらかじめオーバークロックを前提として設計されたモデルを選択したほうがいいだろう。
OC/アイドル時のサーモグラフィー結果 | OC/高負荷時のサーモグラフィー結果 |
続いて、ストレステストを実施した場合のMOSFETの温度を確認すると定格で57℃、オーバークロック時でも64℃で頭打ち。オーバークロック時のサーモグラフィーでも最も温度の高いポイントは62.6℃で、「Fins-Arrayヒートシンク」とヒートパイプを組み合わせた冷却システムはしっかりとその役目を果たしてくれていた。
Skylake-X/Skylake-X Refreshのクロックアップ版として投入された「Cascade Lake-X」。ソケット形状や対応チップセットに変更はないため、基本的には既存のIntel X299マザーボードでも動作させることができる。しかしそのためにはBIOSのアップデートが必須。加えて、クロックアップに伴う電源回路への負担増もあり、新規に組むなら、いくら価格が下がってきているとは言え既存モデルではなく、初めから対応が謳われている最新モデルを購入したほうがいい。
その点今回検証した「X299X AORUS MASTER」は、初期BIOSから「Cascade Lake-X」に対応。さらにオーバークロックにも耐えられる優秀な電源回路と、強力な冷却システムを備え、安心してオススメできる。そして5ギガビットLANやWi-Fi 6対応の無線LANをはじめとした、最新機能に対応しているのも既存モデルにはない魅力だ。
「Cascade Lake-X」で組む場合、最大の障害になるのは入手性の悪さ。Intelにはなるべく早い時期での改善をお願いしたい |
また同時期にリリースされた他社のハイエンドモデルとの比較でも、違いはThunderbolt 3や10ギガビットLANといった一部のエンスー向け機能のみ。それでいて価格はIntel X299チップのミドルレンジ帯である4万円台前半に抑えられている。従来モデルの約2分の1へと価格が大幅に引き下げられた「Cascade Lake-X」にとって、抜群のコストパフォーマンスを誇る「X299X AORUS MASTER」は最良の相棒になるだろう。
協力:日本ギガバイト株式会社