エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.811
2019.12.20 更新
文:撮影・pepe
次はオーバードライブ機能による残像抑制についてチェックしていこう。OSDメニューの「Image」項目から「Trace Free」を選択してオーバードライブ機能を設定する。OSD設定の標準設定は「60」となっており、設定値は0~100まで20刻みの5段階から設定できる。テストではいずれもリフレッシュレートを165Hzに設定し、設定値を「0」、「60」、「100」とした際の違いを「Blur Busters UFO Motion Test」で確認する。その際の映像は、先ほど同様にデジタルスチルカメラのスーパースローモーションで直接撮影した。
左から「Trace Free」の設定値を「0」、「60」、「100」としたところ、値を大きくするにしたがってUFO自体の残像感は抑えられているが、「60」つまり標準設定時は前後のUFO間に不自然に連なったUFOの残像が残ってしまっている。また「100」とした場合は背景がグレー部分でUFOの後部にシアン色がかかった残像が確認できる。
参考としてリフレッシュレートを160Hzに設定したところ、OSDの標準設定となる「60」では先ほどの不自然な残像は消え、設定値「0」よりも残像感が抑えられていることが分かる。一方で設定値を「100」とした場合は、先ほど同様にUFOの後部にシアン色がかかった残像が確認できる。これらは実際の環境やマシン構成にも左右される可能性があることを覚えておこう。
テストセッションの締めくくりは「TUF Gaming VG27AQ」最大のトピックとなるELMBとG-SYNC Compatibleの同時利用が可能な「EXTREME LOW MOTION BLUR SYNC」の効果をチェックしていく。
具体的には、オーバードライブによって応答速度を高めて残像を抑制する「Trace Free」とは別に、バックライトの強制点滅で黒フレームを意図的に挿入、物理的に画面を見えなくすることで残像を低減させるというもの。従来は、モーションブラー低減機能とディスプレイ同期機能を同時に有効化することはできなかったが、高品質で残像感の少ないゲームプレイができる「TUF Gaming VG27AQ」の目玉機能だ。
テストにあたり、再度リフレッシュレートを165Hzに設定。ベンチマーク「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ」の冒頭シーンをデジタルスチルカメラでスローモーション撮影した。
はじめにディスプレイ同期をOFFとした状態で、「EXTREME LOW MOTION BLUR」をONとOFFに設定した場合をそれぞれ比較した。右側の「ディスプレイ同期」OFF+「ELMB」ONは、今までのゲーミングモニター同様に、残像を低減させるためにティアリングやスタッタリングといった滑らかさをトレードオフにした状況だ。動きの少ないシーンやタイトルであれば問題なさそうだが、FPSやレースタイトルと比較してそれらの影響を受けにくいとされるMMOタイトルでも、頻繁にティアリングの発生が視認できてしまう。
続いてディスプレイ同期をONとした状態で、「EXTREME LOW MOTION BLUR」をONとOFFに設定した場合をそれぞれ比較した。左側は、従来のゲーミング液晶同様に、ディスプレイ同期によってティアリングやスタッタリングを防止、リフレッシュレートや応答速度を高めることで残像を抑制していた。
そしてディスプレイ同期とモーションブラー低減機能ELMBを同時に有効化したものが右側の動画だ。バックライトの強制点滅により残像感が抑制され、もちろんティアリングやスタッタリングも発生せずに滑らかな描画を確認できる。スローモーション撮影をしているため、比較動画ではひたすら黒フレームが流れているように見えるが、肉眼では全く視認できず、驚異的な滑らかさで低残像を実現している。
今まで、バックライトを強制点滅させるソフトウェアツールは存在していたが、色や映像に乱れが出たり極端に輝度が低下したり、そもそも非公式なツールであるため積極的に使用できるものではなかった。それに対してASUS謹製の「EXTREME LOW MOTION BLUR SYNC」は、ハードウェア処理でバックライトを強制点滅するため信頼性が高く、いわゆる黒フレームによる輝度の変化もOSDの調整でカバーすることができる。
「EXTREME LOW MOTION BLUR」のOFFとONでは黒フレーム後にハイライト部分で白飛びしやすい |
「EXTREME LOW MOTION BLUR SYNC」を有効にすると、黒フレーム通過後の明転時に輝度が急激に上がり、ハイライト部分で白飛びを起こしているようにも感じる。おそらくバックライトの点灯時間が減少することによる輝度低下を補うために、明転後の輝度を高めているのかもしれない。こんな時はOSDの「Color」メニューから調整するといいだろう。