エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.812
2019.12.23 更新
文:エルミタージュ秋葉原編集部 絵踏 一/撮影:松枝 清顕
総合的なパフォーマンスをチェックしたところで、専用ヒートシンクの「M.2 Armor」を装備したM.2スロットの性能を検証してみよう。チップセットの関係で接続インターフェイスはPCI-Express3.0だが、あえて最新のPCI-Express4.0(x4)に対応したCFD「PG3VNF」シリーズの2TBモデル「CSSD-M2B2TPG3VNF」を搭載。どの程度の速度が発揮できるかを見ていきたい。
1GiB | 8GiB |
16GiB | 32GiB |
帯域幅が32Gbpsに制限されるため、さすがに本来の性能は発揮できないものの、それでもシーケンシャルアクセスは3,500MB/secに迫る速度をマーク。PCI-Express3.0(x4)接続のM.2スロットとして、十分な高速性能を見せてくれた。
そして計測に時間がかかることから、サーマルスロットリングが発生しやすい大容量データのベンチマークでも速度が低下しにくい点は好印象。32GiBでは一部データで落ち込みが見られるが、ここまで大きなデータサイズを扱うことは(特にミドルレンジ環境であれば、なおさら)珍しい。ほとんどのシチュエーションにおいて、「M.2 Armor」は確実な放熱でM.2 SSDの高速性能をサポートしてくれるだろう。
最後は各種ベンチマークを実行中のCPU温度、そして消費電力を振り返り、テストセッションを締めくくろう。オーバークロックによる発熱の影響や、ミドルレンジのシステム全体の消費電力がどの程度に収まっているのか。場合によっては、組み込むパーツの選択にも関わってくる問題だ。
まずCPU温度を見てみると、高負荷時でも定格で71℃、オーバークロック時でも82℃に収まっている。特にオーバークロック状態でも90℃に達することなく冷やしきっているあたり、「Wraith PRISM」はかなり実用的なクーラーと言っていいだろう。さらに高冷却志向のクーラーを用意すれば、パフォーマンスの伸びしろにも期待できる。ただしオーバークロックのトレードオフとして、アイドル時の温度もやや高めになっている点には注意だ。
消費電力は、最大でも200W強とおとなしいもので、Ryzen 5 3600とRadeon RX 5500 XTを組み合わせたシステムは、極めて省電力であることが分かる。そしてオーバークロックを施しても消費電力増加は最大約20Wと小幅であり、過剰に心配する必要はなさそうだ。この構成であれば、電源ユニットも450~500Wクラスのモデルで十分まかなえる。
優れたマルチスレッド性能に加えて、シングルスレッド性能の大幅改善でさらに魅力を増した第3世代Ryzenシリーズ。もしRyzen 7以上のCPUを使うのであれば、PCI-Express4.0など最新機能が利用できるX570環境に目が移るところ。しかしより手頃に第3世代Ryzenベースのマシンを組みたいという向きには、シリーズ最廉価モデルのRyzen 5 3600と、コストパフォーマンスに優れたマザーボードのセットがベストだろう。
折しも発売が開始されたばかりの新型GPU Radeon RX 5500 XTを組み合わせれば、10万円以下で快適なフルHDゲーミング環境が完成。Radeon RX 570クラスにグラフィックスを下げれば、さらに一式の価格は手頃になる。
そうしたニーズにピタリとハマるマザーボードが、低価格で高耐久、さらに高機能な「B450 Steel Legend」だ。旧チップ搭載モデルゆえにPCI-Express4.0こそ非対応だが、それ以外は見事に隙がない。ミドルレンジユーザーの多くが該当するであろう、シングルグラフィックスカードのフルHDゲーミング環境には、これ以上ない選択肢と言える。
長期間の安定動作はもちろん、オーバークロックも楽しめる万能選手ぶりは健在。発売当初は第2世代Ryzenのベストパートナーとの呼び声が高かったモデルだが、世代が変わった今でもその魅力はまったく色あせていない。年が改まっても売れ筋に座り続ける、異例のロングセラーモデルになりそうだ。
協力:ASRock Incorporation