エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.818
2020.01.14 更新
文:エルミタージュ秋葉原編集部 池西 樹
一通りベンチマークテストが終了したところで、ここからはコンパクトPCを使う上で懸案となる冷却性能をチェックしていこう。ストレステストには「OCCT 5.5.1:POWER SUPPLY」を使い、30分負荷をかけた状態を高負荷時、起動直後10分間放置した状態をアイドル時として、CPUの温度やファンの回転数、騒音値を測定した。
アイドル時のサーモグラフィ結果 | 高負荷時のサーモグラフィ結果 |
CPUの温度はアイドル時が43.5℃、高負荷時でも64.8℃で頭打ち。Ryzen Embedded V1605Bの最高Junction温度である105℃まではまだかなり余裕あり、「4X4 BOX-V1000M/JP」の冷却性能はかなり優秀。またサーモグラフィを確認すると、側面の吸気口部の温度が低く、背面の排気口付近の温度が高くなる理想的な結果だ。
またファンの回転数と騒音値を確認すると、アイドル時の回転数は1,200rpm前後、騒音値は暗騒音+1.7dBAの34.9dBAでほぼ無音といっていいレベル。一方、高負荷時はおおむね4,500rpm前後で推移し、騒音値は47dBA前後まで上昇した。特別うるさいというわけではないが、コンパクトPCはデスク上や液晶ディスプレイの背面など、比較的近いところに設置することが多い。そのためデスクトップPCに比べて、相対的にやや耳障りに感じられる可能性はある。
ベンチマークセッションのラストは消費電力をチェックしていこう。計測の条件は前項と同じく、「OCCT 5.5.1:POWER SUPPLY」を30分動作させた状態を高負荷時、起動直後10分間放置した状態をアイドル時とした。
アイドル時は約12W、高負荷時でも60W前後で頭打ち。「4X4 BOX-V1000M/JP」に付属するACアダプタの出力は96Wのため、余力もまだまだ残されている。M.2スロットにSSDを、2.5インチベイにHDDを搭載するようなデュアルストレージ構成でも出力が不足することはない。
撮って出しレビューでは初登場となる省電力SoC Ryzen Embeddedを搭載した、超小型ベアボーンキットASRock「4X4 BOX」シリーズ。レビューを終えた率直な感想は“想像していた以上に快適に動く”だった。
超小型PC、特にIntel Atom系アーキテクチャを採用したモデルの中には、OSやアプリケーションの起動、ファイル操作といった、基本的な動作でもややもたつきを感じる製品がある中、「4X4 BOX-V1000M/JP」ではそういったことは一切なし。さらにベンチマークでは、Ivy BridgeやHaswell世代のハイエンドCPUとも渡り合えるスコアを叩き出し、改めてZenアーキテクチャの強さを感じさせられた。
またGPUについても過度の期待は禁物だが、ライトなゲームなら快適にプレイできるレベルで、超小型ベアボーンキットとしては合格点。M.2 2280非対応のM.2スロットや、最近のモデルとしてはやや古さを感じるIntel Wireless-AC 3168によるワイヤレス機能など、細かな点で改善して欲しいところはあるものの、多くのユーザーにとっては大きな欠点にならないはずだ。
インダストリアル向け製品にありがちな取っ付きにくさもなく、組み立ても簡単な「4X4 BOX」シリーズは、Intel NUCシリーズをはじめとした超小型ベアボーンキット(およびデスクトップPC)の強力なライバルになるだろう。
協力:ASRock Incorporation