エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.848
2020.04.04 更新
文:/撮影・pepe
IPS方式でありながら1ms(GTG)の応答速度を誇る「TUF GAMING VG279QM」、続いてはオーバードライブ機能による残像抑制についてチェックしていこう。OSDのデフォルト値は「60」となっており、設定値は0~100まで20刻みの5段階から設定できる。テストではいずれもリフレッシュレートを280Hzに設定し、設定値を「0」、「60」、「100」とした際の違いを「Blur Busters UFO Motion Test」で確認する。その際の映像は、先ほど同様にデジタルスチルカメラのスーパースローモーションで直接撮影した。
左からオーバードライブの設定値を「0」、「60」、「100」としたところ、値を「0」とするよりも「60」とした方が、残像感が抑えられ描画も安定している。一方で値を「100」とした場合は背景がグレー部分でUFOの後部に白く輪郭が残っているのが確認できる。今回のテストではデフォルト値である「60」が最適であることが分かった。これらは実際の環境や用途にも左右される可能性があることを覚えておこう。
最後のテストは「TUF GAMING VG279QM」の注目技術となる、モーションブラー低減技術「EXTREME LOW MOTION BLUR」と可変リフレッシュレート型同期機能「NVIDIA G-Sync」の同時利用を可能にした「EXTREME LOW MOTION BLUR SYNC」の効果をチェックしていく。
応答速度を高めて残像を抑制する「オーバードライブ」とは別に、バックライトの強制点滅で黒フレームを意図的に挿入し、物理的に画面を暗転させることで残像を低減させるものだ。
テストでは、ディスプレイ同期をONとした状態でリフレッシュレートを280Hzに設定し、「EXTREME LOW MOTION BLUR SYNC」をONとOFFにしてそれぞれ横並びで「Blur Busters UFO Motion Test」およびレースゲーム「Assetto Corsa」のリプレイにて比較している。その際の映像は、先ほど同様にデジタルスチルカメラのスーパースローモーションで直接撮影した。
「EXTREME LOW MOTION BLUR SYNC」をONにした右側では黒フレームが挿入され、背景部分の色に関わらず暗転によってわずかにUFOの残像感が抑制されている。またごくわずかではあるが明転直後は輝度の上昇によりハイライト部分が目立つようにも感じる。
「Assetto Corsa」でも「EXTREME LOW MOTION BLUR SYNC」をONにすることでフレーム更新時の残像は低減されているが、「Blur Busters UFO Motion Test」のような単純な描画ではないことと、280Hzの超高速リフレッシュレートの恩恵により、肉眼でその効果をはっきりと感じることは困難な領域に達している。
高リフレッシュレートかつ応答速度の速いゲーミング液晶であれば、一般的にTN方式のパネルを採用することが多い。しかし「TUF GAMING VG279QM」では不利とされるIPS方式を採用しながらも最大280Hzのリフレッシュレート、1ms(GTG)という一切の妥協がない驚異的なスペックを実現した。IPSパネル特有の色再現性の高さや視野角による変化も抑えられ、尖ったエンスージアスト向けでありながら使い易さが犠牲になっていない。終盤に行ったリフレッシュレート比較においては、120Hzとの差は歴然、240Hzと比較しても明らかに残像感が少なく、280Hzというリフレッシュレートがもつ優位性はかなり高いと言っていい。日ごろからハイスピード環境でプレイしているユーザーであれば、その違いはすぐに分かるだろう。
一方でディスプレイ同期技術はティアリングやスタッタリングを解決する上で欠かせない重要な機能だが、高リフレッシュレート、それに対応する高フレームレートが備わっていれば、肉眼でその現象を確認することは非常に難しく、”ズレがある”、”残像がある”と感じることが難しいほどだ。さらに「EXTREME LOW MOTION BLUR」機能は、バックライトを強制点滅させる仕様上、時間平均あたりの画面輝度が低下し、明転後の輝度上昇でハイライト部分が白飛びしやすいという特徴があるため、残像感を感じないのであれば、そもそも使用しないという選択もある。いずれにせよその優れたパフォーマンスを最大限に発揮させるためには、GeForce RTX 2080 TiやGeForce RTX 2080 SUPERといったハイエンド環境が必須になるだろう。
派手なLEDイルミネーションや“ゲーミングっぽいデザイン”に固執せず、シンプルに使いやすさと機能性を高め、ゲーマーが本当に必要とする性能を追求した「TUF GAMING VG279QM」。1フレーム当たりたったの0.0035秒という新次元に到達しており、ASUSが“WORLD’S FASTEST GAMING MONITOR(世界最速のゲーミング液晶ディスプレイ)”と自称する言葉に偽りはない。
協力:ASUS JAPAN株式会社