エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.849
2020.04.06 更新
文:撮影・エルミタージュ秋葉原編集部 松枝 清顕
「P82 Flow」への水冷導入を考えた場合、製品の性格を考えれば本格水冷ではなく、自ずとメンテナンスフリーのオールインワン型水冷ユニットになる。ラジエター搭載スペースは、フロント360/280mmサイズ、トップ240mmサイズ、リア140mmサイズの計3箇所。ただし、フロントには140mmファンが3基標準装備されているため、手を加えたくないと考える人は多いはず。リアも有効だが、冷却能力も多少の余裕が欲しいため、ここはトップマウントの240mmサイズがオススメだろう。
ここではARGB120mmファン2基をラジエターに搭載し、ARGB LED内蔵ウォーターブロックで構成するAntec「Neptune240」を用意し、搭載テストを試みた。
マグネット固定の防塵フィルタを外し、240mmサイズラジエターをネジ留め。搭載テストでは120mmファンサイズでスリットタイプのネジ穴に、8本全てのネジを使い固定している |
外装をスリーブ保護し、テフロンコートを施した高品質PTFEチューブの長さもピッタリ。ラジエターおよび冷却ファンは物理的干渉をおこさずマウントができている。作業について特筆すべき注意点も見当たらない |
グラフィックスカードの有効スペースは公称380mmまで。どんなにハイエンドの大型VGAクーラー付きでも350mmを超える製品はそうそう見当たらない。「P82 Flow」に組み合わせるグラフィックスカードは、現在流通するほとんどが搭載できるとみていいだろう。普及価格帯のミドルタワーPCケースながら、ハイエンド志向のPCが構築できるよう設計されている事が分かる。
次に搭載方法を確認すると、拡張ブラケットの固定は筐体外部で行う事になり、拡張スロットの側面をカバーするプレートが装備されていた。上下2本のハンドスクリューで固定され、緩めることで右方向にスライド。拡張ブラケットをインチネジで固定したのち、側面を押さえるプレートを被せればいい。
搭載テストにはMSI「GeForce RTX 2080 Ti GAMING X TRIO」をチョイス。基板幅は140mm、長さは327mm(厚さ55.6mm)の重量級グラフィックスカードだが、スペース的にも余裕を持って固定ができている |
組み込みセッションの最後に、ストレージの搭載テストを試みた。ケージタイプのシャドウベイユニットには、ABS樹脂製トレイ部に3.5インチHDD、天板部分に2.5インチSSDをそれぞれ搭載。「Movable 2.5″ SSD Rack(ムーバブル2.5インチベイ)」には、2台の2.5インチSSDを搭載してみる。
ABS樹脂製トレイには左右に各2つの突起が設けられ、ツールフリーで3.5インチHDDが固定可能。なおコの字型のケージは一旦取り外して作業を行っている |
ケージ天板部に2.5インチSSDを固定。取り外したシャドウベイユニットの裏側からSSD底面4箇所にネジ留めを行う。なおコネクタはケーブルの取り回しを考慮し、右サイドパネル側に向けて搭載する |
「Movable 2.5″ SSD Rack(ムーバブル2.5インチベイ)」は、ドライブ固定用ゴムブッシュとSSD固定用ミリネジを使い、トレイの裏面から固定する |
「Movable 2.5″ SSD Rack(ムーバブル2.5インチベイ)」は2パターンのポジションにマウント可能。ただし魅せるスタイルの左サイドパネル側に固定した場合、グラフィックスカードは約270mm以下の長さに制限される事を覚えておこう |
ざっくり言うと、「P8」後継のプロトタイプが想定以上に出来が良すぎて「P120 Crystal」が誕生。新たに設計された「P82 Flow」は、やや異質な経歴の持ち主と言えよう。
数日間にわたり評価サンプルに触れてきたが、1万円以下で購入できるミドルタワーPCケースとしては、さすがに上手くまとめられている。近頃のPCケースといえば、妙に凝りすぎた仕掛けにより、良く出来てはいるものの、「そうじゃないんだけどなぁ」と感じる場面に出くわす事が多くなった。難しい仕掛けがあれば多少のコスト上昇にも目をつむり、ユーザーが満足するだろうという考えは、必ずしも正しくはない。
さて、普及価格帯という立ち位置から、そうそう凝った事はできないであろう「P82 Flow」。組み込み易さを重視した、”正確に自作PCの平均値に合わせた”PCケースという印象を持った。奇をてらう事無く、平均値で図面に線を描き、完成したPCケースといえば、雰囲気は掴んで頂けるかもしれない。
とは言えそこはAntec。シンプルで極力装飾しない外観こそAntecデザインで、どんなロケーションでもしっくりと収まるだろう。もちろん140mmファンを標準で4基備えた「Flow」を象徴する装備品も、忘れてはならないアピールポイントになっている。そう思えば、「P82 Flow」はかなりコストパフォーマンスに優れたPCケースと言える。Antecは長く売り続けるコツを知っている。
協力:Antec
株式会社リンクスインターナショナル