エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.850
2020.04.08 更新
文:松野 将太/撮影:松枝 清顕
本製品はゲーマー向けだけでなくクリエイター向けの用途も想定しているため、写真編集と動画編集に関わるテストも試してみよう。まずは鉄板の写真編集アプリ「Lightroom Classic CC」で、299枚のNEFファイル(7,360×4,912ドット、容量12.5GB)を最高画質のJPEG画像に書き出すまでの時間を計測した。
デジタル現像にはCPUの処理性能が強く影響しがちだが、「Ryzen 9 3950X」を搭載することにより、2分30秒ほどで約300枚の書き出しが完了した。一般的なCPUでは2~3倍の時間がかかることも珍しくないため、大量のデジタル現像を日常的に行うのであれば、CPUを「Ryzen 9 3950X」にアップグレードするのがベストだろう。
最後に動画編集ソフト「Premiere Pro CC」での動画書き出し時間をチェックしよう。再生時間7分41秒の4K動画を、H.265(HEVC)、解像度フルHDのMP4ファイルとして書き出すまでの時間を計測している。
書き出しまでにかかった時間はおよそ4分ほどと、良好な結果だ。写真編集だけでなく、動画の書き出しについても高いパフォーマンスが望めるだろう。なお、GPU支援が効いているため、GPUをハイエンドな製品に交換することでさらなる時間短縮が望める。
セッションの最後に、システムの消費電力と冷却性能をチェックしておこう。まずは消費電力だ。テスト方法は、「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク」を動作させた際の最高値を高負荷時、起動後10分間何もせず放置した状態をアイドル時として採用し、計測はワットチェッカーで行っている。
アイドル時の消費電力は70Wと、デスクトップPCとしてもやや高め。「Ryzen 9 3950X」に代表されるハイエンドパーツを多数搭載しているため、この点は致し方ないと言えるだろう。高負荷時は消費電力が300Wをわずかに超えるが、ハイエンドGPU搭載PCとしては一般的な値だ。標準構成でも容量660Wの電源ユニットを搭載しているので、特別問題にはならないと思われる。
続いて、「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク」を3回連続で実行した際のCPU、マザーボード、GPUの温度を見てみよう。なお、温度情報は「HWiNFO」で取得している。
見ての通り、連続実行中も温度の上昇は極めて緩やかで、それぞれのパーツがしっかりと冷えていることが分かるだろう。実行中に騒音が大きくなることもなく、パフォーマンス・冷却ともに極めて安定したPCと言えそうだ。
「Premium-Line X570FD-A」は、高性能なCPUやGPU、ストレージといったパーツを贅沢に使用しつつ、Fractal Designとのコラボレーションにより高いデザイン性と冷却性、静粛性までをも併せ持つ、非常に完成度の高いBTO PCだという印象を受けた。特に多くのユーザーにとって魅力的と思われるのが、ハイパフォーマンスらしからぬ静かさ。これだけの性能を備えながら静粛性も高い、というモデルはそれほど多くない。それぞれの要素が高いレベルでまとまっている上、Premium-Line特有のアフターケアの手厚さにより、ハイエンドな自作系のPCに慣れていないユーザーに勧めやすいのも魅力的な点だ。
また、近年はPC自体の趣味性が高まっていることもあり、単なる機能性だけでなく、外観に強いこだわりを持つユーザーが増えている。その点においても、本製品は単にFractal Designのパーツを使うだけに留まらず、それぞれのパーツの外観をしっかりマネジメントし、全体に統一感を持たせているのは大いに評価できる。性能も機能もデザインも全てにこだわりたい。そんな欲張りなユーザーであれば、「Premium-Line X570FD-A」を検討する価値は大いにあるはずだ。
協力:株式会社サイコム