エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.857
2020.04.23 更新
文:エルミタージュ秋葉原編集部 絵踏 一/撮影:松枝 清顕
「FOCUS GX」シリーズには、低負荷時にはファンが回転しない「ハイブリッドファンコントロール機能」が搭載されている。ミドルレンジ以上のモデルでは定番になっている、いわゆるセミファンレス機能だ。しかしながら、ファンが回転しないことで、冷却面や信頼性への悪影響を心配する人も少なくないだろう。そこでテストセッションの締めくくりとして、ファンレス動作中の挙動も合わせて確認しておきたい。
テストは「3DMark」におけるDirectX 12対応の軽量ベンチマークである「Night Raid」をチョイス。うまい具合に30分間ファンレスでループ動作してくれた。その際の電圧変動やその他の挙動をチェックしてみよう。
まずはこれまで通りに電圧変動に目を向けると、ファンが回転していた際と同様に、極めてフラットな波形を描いている。+12Vの変動幅も「OCCT」などと同じ数値であり、ブレのない安定性はファンによる冷却の有無でまったく変わらないようだ。むしろ全体的な負荷が低めなこともあり、+5Vや+3.3Vを含めた変動幅も控えめになっている。
そして気になる電源ユニット全体の温度をサーモグラフィーで確認したところ、ベンチマーク中で最も高かったのは、一次側の整流回路で67.4℃。メイントランスやスイッチング回路でも相応の発熱が発生しているが、ファンレス時は最大でも60℃台に留まっていることが分かる。
ちなみにメーカーサイトの解説を確認すると、負荷30%でファンが回り始めることになっている。しかし実際には、350Wを超えるまでファンが回転しない場合があるなど、単にシステム負荷だけを読んでいるわけではないようだ。
70℃を超えた場合は、システム負荷に関わらずファンが回転していた |
そこで試しに他のベンチマークを回してみたところ、350W以下でもファンが回転する場合があり、その際は温度が最大70℃を超えていた。つまり負荷や温度を総合的に判断し、最適な動作モードで冷却を行っているというワケだ。こと「FOCUS GX」シリーズに関しては、ファンレス動作に対する心配は無用と言っていい。
電源ユニットにおける80PLUS GOLD認証モデルは、特にバリエーションが豊富なミドルレンジ向けの売れ筋クラス。価格勝負の格安モデルも数多く存在するワケだが、今回検証を行った「FOCUS GX」シリーズは、それらとはまったく血統の異なる製品だ。
フルモジュラーのケーブル仕様や高品質コンポーネント、高級モデル同様のケーブルレス設計といったハイグレードな要素は、クラスを超えた武器と言える。電源ユニットに求められる動作の安定性は一級品のそれで、価格以上にユーザーの期待に応えてくれるだろう。上位のPLATINUM認証モデルには手が届かないが、同水準の信頼性が欲しいという、欲張りなニーズを満たすだけの性能を備えている。
そしてその信頼性を支える、優秀かつスマートな冷却機構も注目の要素。場合によっては敬遠されることもあるセミファンレス機能だが、ファンレス駆動時もまったくブレることのない安定した動作は、さすがの一言。複数のステータスを分析してファンを制御する「ハイブリッドファンコントロール機能」もまた、無駄のない最適な冷却効果を発揮していた。無効化することも可能とはいえ、積極的にセミファンレス動作を選択できるだけの安心感がある。
少々地味さの漂う筐体デザインはご愛嬌。質実剛健なミドルレンジ向け電源ユニットの秀作として、息の長い人気モデルになるかもしれない。
協力:Sea Sonic Electronics
株式会社オウルテック