エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.867
2020.05.11 更新
文:撮影・エルミタージュ秋葉原編集部 松枝 清顕
アルミニウム製の両サイドパネルを取り外した状態で、内部構造をくまなく見ていく。16リットルのコンパクトなボディが特徴だが、限られた内部容積から拡張性はどれほど期待できるだろうか。手元資料も確認しつつ、「Era ITX」の構造を一つずつ解説していく。
左サイドパネル側の開放状態 |
右サイドパネル側の開放状態 |
厳密に言えばトレイ状ではない、マザーボードの固定エリア。一般的にマザーボードトレイと呼ばれる部分は要所が広くカットされており、ネジ留めを行う台座のスタンドオフは、予め装着された状態で出荷される。対応フォームファクタはMini-ITXのみとあって、170mm四方の基板が収められるだけのスペースしか割り当てられていない。
水色の丸で囲んだ部分がスタンドオフ。なお説明が遅くなったが、マザーボードトレイにアクセスするには、縦にネジ留めされている「ドライブブラケット」を外しておく必要がある |
一般的に内部容積に限りがある小さなPCケースの場合、冷却機構を得意としない。構成パーツで内部がギッチリ詰まるだけでなく、物理的に冷却ファン(それも大口径)を搭載するスペースが確保できないからだ。「Era ITX」も例外ではなく、さすがに「Define 7」のような冷却パフォーマンスは期待できない。それでも内部が最適化された高効率なチムニー構造により、5箇所のファンが搭載できるように設計されている。どちらかと言えば”捻出されている”という表現に近いが、ここからは「Era ITX」の冷却ファンレイアウトを解説していこう。
通気孔仕様のトップパネル部には、最大2基の120mmファンが搭載できる。チムニーとは煙突を意味するワケだが、上昇する熱を上空に強制排出するには、この面で排気させる事が最も自然であり、効率が良いはずだ。オプション扱いの任意増設スペースだが、騒音値が気にならない1,000rpm以下の120mmファンをチョイスし、緩やかに風の流れを作ってあげた方がいいだろう。
また、冷却ファンを固定する天板は「ラジエターブラケット」で、スリット式ネジ穴には120/240mmサイズラジエターも搭載可能。有効スペースは最大幅125mmまで、厚さは冷却ファンを含め最大67mmまでとされる。
リア上部には「SSR3」(Silent Series R3)80mmファンが標準で装備されている。カタログモデルとは異なり、ケースファン用のブラックインペラ仕様。簡易流体軸受け(ライフルベアリング)を採用し静音性も確保されている。久し振りに見た80mmファンはとても小さく見えるものの、CPUソケットに近いポジションだけに、強制的に外部へ熱を排出する重要な役割を果たしてくれる。
仕様を確認すると、回転数1,600rpm、騒音値18.1dBA、風量20.2CFM、静圧0.99mmH2Oで、MTBFは40,000時間とされる |
リアスリットにテーパーネジで固定。マウントポジションを調整することが可能 |
外装周りのチェック時では密閉されていたはずのボトム面。実はここにも最大2基の140mmファンが増設できるとされている。外部から6本のネジでシャーシに固定されているボトムパネルを外すと、ネジ穴と複数にカットされたボトム面が露わになる。この面を使い、筐体内部側から冷却ファンを固定する。ちなみにエアフローは格子状デザインのスリットで確保。もし増設するなら外気を取り入れるように設置するはずだが、搭載エリアはグラフィックスカード(2スロット占有モデル)の搭載スペースとトレードオフの関係にあるため、実際に活用されるケースは稀だろう。
グラフィックスカードの増設をしなければ、ラジエターも搭載が可能。ただしよほどの事情がない限り、冷却ファンおよびラジエターの増設で活躍する事はなさそうだ |