エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.871
2020.05.21 更新
文:松野 将太/撮影:松枝 清顕
消費電力の違いもチェックしておこう。さすがに10コアCPUだけあって、単にCINEBENCHを回すだけでも消費電力はかなりのもの。さらにOC時では、あくまでライトなOC設定を適用しているため、電力も最大70W前後の上昇を見せている。さらに高い動作クロックでの安定運用を志向するのであれば、「Z490 Taichi」のような堅牢な電源設計のマザーボードを選びたいところだ。
最後に、M.2スロットのヒートシンクをM.2 SSDに装着した際の冷却性能を確認してみよう。検証は「CrystalDiskMark 7.0.0」で、データサイズを64GiBに固定し、各テスト回数9回のベンチマークを3セット連続で実行。その際の温度と転送速度を「HWiNFO 64」でモニタリングし、ヒートシンク装着時と非装着時、2パターンの推移をグラフ化している。なお、SSDはPCI-Express4.0対応の1TB SSDを使用し、装着スロットは最上段のM.2_1とした。
テストにはPCI-Express4.0対応、シーケンシャルリード5,000MB/s、シーケンシャルライト4,400MB/sのM.2 SSDを利用したが、現状の組み合わせではPCI-Express3.0での動作となる。インターフェイスの限界に迫る速度が出ているのがよく分かるだろう |
データサイズが極めて大きいため、ストレージには強めの負荷がかかるテストだが、グラフを見ればその差は一目瞭然。ヒートシンク非装着時には80℃以上まで上昇していた温度が、ヒートシンク装着時には多くの場面で50℃を下回るレベルまで低下しているのが分かるだろう。また、ヒートシンクなしではサーマルスロットリングが発生し、大きく性能が落ちてしまうが、ヒートシンクを装着することで大きな性能の落ち込みはなくなる。リード3,000MB/secを超えるPCI-Express3.0対応のM.2 SSDはもちろん、次世代でサポートされるはずのPCI-Express4.0対応SSDも問題なく冷却可能だろう。
「Z490 Taichi」は、10コアCPUを乗りこなすハイエンドマザーボードに相応しい性能と、「BFB」や次世代CPUでのPCI-Express4.0対応などの独自機能、USB 3.2 Gen2x2や2.5Gbps LAN、Wi-Fi 6といった最新の高速規格までをがっちり網羅した、極めて高い汎用性を備えるマザーボードだ。性能的にも機能的にもこれといった弱点が見当たらず、加えて他社にない強みを持っているため、Intel Z490マザーボードの購入を検討する際は外せない存在と言えるだろう。
組み合わせて使うべきCPUは、通常であればオーバークロック向きのCore i9-10900K、と言うはずのところだが、BFBのポテンシャル次第では、K付きであろうとKなしであろうと魅力的に料理できてしまうという、これまでのモデルとはまったく異なる楽しみ方も生まれてくるかもしれない。発売前のタイミングで、BFBのテストに使えるCPUが用意できなかったのは残念だ。いずれにせよ、ラインナップの中でも尖った機能と屈指のスペックを備える「Z490 Taichi」が、あらゆる自作ユーザーにとって魅力的な存在であることは間違いない。
協力:ASRock Incorporation