エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.873
2020.05.25 更新
文:松野 将太/撮影:松枝 清顕
「CPU-Z 1.92.0」で「Core i9-10900K」の情報を取得。モニタリングするソフトによって動作クロックの値がまちまちになるようだが、「CPU-Z 1.92.0」で表示される動作クロックは5.3GHzに届いていなかった |
並行して計測に使用した「タスク マネージャー」や「INTEL Extreme Tuning Utility」では5.3GHz近い動作クロックが表示されているのを確認した |
さっそく、CPUを定格動作させた場合と、簡易的なオーバークロック時の性能、温度、消費電力を見ていこう。ベンチマークテストは「CINEBENCH R15」「CINEBENCH R20」「3DMark」の3種類で、すべてのテストが完走できるコアクロックと電圧の組み合わせを探ってみることにした。Core i9-10900Kはシングルスレッド動作時の最大ブーストクロックが5.3GHz、全コア動作時の倍率が最大4.9GHzとなるCPUだが、そもそもの倍率が非常に高いのが大きな特徴だ。そのため、今回はベンチマーク動作時の温度が90℃を超えなかった全コア動作時5.1GHzの設定をオーバークロック時のスコアとして採用している。
「CINEBENCH R15」のマルチスレッドテストのスコアは、定格時が2,620cb、OC時が2,616cb。OC時は200MHzほどのクロック差がある設定にも関わらずスコアが伸びなかった。一方で、「CINEBENCH R20」では、定格時が6,354pts、OC時が6,569ptsと、はっきりと分かるスコア差が出ている。動作クロックの推移を見たところ、極端な変動は確認できなかったため、おそらくはソフト側の問題ではないかと思われる。なお、シングルテストは最大5.3GHz近くまでクロックが上昇するため、定格・OC時ともにスコアは220cb前後だ。
ベンチマーク中の温度も確認してみよう。「CINEBENCH R20」を3回連続で実行した際の温度を「HWiNFO 64」でモニタリングしてグラフ化したが、定格時の最大温度は70℃前後。オーバークロック時の温度は80℃前後と、OC後では約10℃上昇。360mmのオールインワン水冷ユニットであれば冷却能力は足りているが、OCを視野に入れるならしっかりした冷却システムを用意すべきだ。
サーモグラフィーで確認すると、ベンチマーク中のVRMヒートシンク部の表面温度は30~40℃前後。極端な発熱は見られないようだ。継続的な負荷をかければもう少し温度が高くなる可能性はあるが、ファン付きクーラーの効果もあり、あまり高温にはならないと思われる |
続いて、3Dグラフィックス系のテストである「3DMark」の結果を見ていく。プリセット系5種の結果は、NVIDIA GeForce RTX 2080 Ti装着時のスコアとしては十分なものだが、CPUオーバークロックによる恩恵は誤差レベルに留まる。ゲーム用途で考えた場合、温度の問題も考慮すると、無理にオーバークロックを狙う必要はないかもしれない。
温度も見てみると、「Time Spy Extreme」動作時のCPU温度は、定格で最大約70℃、OC時で最大約80℃。大きく数値が跳ね上がる箇所を除けば明確な差は出にくいが、いずれにせよオーバークロック時の冷却性能は課題になりそうだ。Core i9-10900Kを使用する場合、できれば性能の良い水冷クーラーを用意しておきたいところだ。
セッションの最後に、消費電力の違いもチェックしてみる。OC設定はあくまで簡易的なものではあるが、電力は最大70Wほどの上昇を見せている。CPUに負荷をかけるだけでもかなりの電力を使用するため、特にハイエンドCPUのオーバークロックを検討する場合は、堅牢な電源回路をもつマザーボードが必要になるだろう。