エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.876
2020.06.03 更新
文:撮影・エルミタージュ秋葉原編集部 松枝 清顕
さらに作業を進め、オールインワン型水冷ユニットを搭載する。用意したのは240mmサイズラジエターのFractal Design「Celsius+ S24 Prisma」。ラジエターの設置場所は、フロントに140mmファンが標準で装備されているため、トップパネル部を選択した。
作業自体はいたってスムーズ。左サイドパネル側の開口部が広く、組み込みを邪魔する物がない。マニュアルの手順通り進めて行けば、自作経験の浅い人でも難なく搭載ができるはずだ。
トップパネルのブラケットはネジ穴がスリットタイプだけに、ラジエター固定位置の調整が可能。組み込み後は「Ventilated top」に付け替えておこう |
グラフィックスカードの有効スペースは341mm。さらにフロントに標準装備される「Dynamic X2 GP-14」を取り外せば、360mmまで延長。ハイエンドグラフィックスカードにも十分対応できるスペースが確保されている。とは言いつつ、検証ではMSI「GeForce RTX 2060 GAMING Z 6G」を用意。長さは247mmのミドルレンジグラフィックスカードを搭載してみよう。
搭載方法は、拡張スロット2段目と3段目にインチネジで固定。ごく一般的な固定方法でグラフィックスカードはマウントできる |
敢えて計測するまでもなく、フロント標準ファン「Dynamic X2 GP-14」まで十分に空きスペースがある。製品名のCompactに違和感さえ覚えるほど内部空間が確保できている事が分かった |
最後にストレージの搭載方法もご紹介しておこう。ストレージが搭載できるポジションは計3箇所。収納力が自慢のミドルタワーPCケースではないが、兄弟モデルの「Define 7/XL」も決してウリにしているワケではない。必要最低限の装備の割り切りでも、市場からは不満の声はあまり聞こえてこない。どうやらFractal Designの判断は、間違っていなかったようだ。
2.5インチ専用トレイは、SSDの底面をミリネジで固定。マザーボードトレイ背面に設置する場合、コネクタは下向きにセットする事になる |
3.5インチHDDは、HDD DampenerとHDD Screwを使用。なおシャドウベイユニットを前寄りにスライド固定すると、赤い丸で囲んだ部分に下段が干渉し、専用トレイの取り外しができなくなるトラブルが発生。引き出せる位置までシャドウベイユニットをずらすしかない |
2.5インチ専用トレイを、ボトムカバー天板に移設。なおこちらに搭載する場合、コネクタをマザーボードトレイ背面搭載時とは逆にして固定する事になる |
「Define 7 Compact」の良さは、昨今の大型化するミドルタワーPCケースを見直した、扱い易いコンパクトサイズにある。ネーミングの語感から、どうしても小さい筐体という印象が強いが、スペック的には数年前まで一般的だった、ミドルタワーPCケースのサイズと変わらない。検証の始まりは「Define 7」シリーズの末っ子(ともすれば廉価版)という印象だったが、実際には「Define 7/XL」のサイズを切り詰めて価格を下げた、単なるエントリーモデルでは無い事が分かった。
先行発売されたシリーズ2モデルに比べれば、さすがに窮屈な点は否めない。とは言え、必要最低限の装備はきちんと揃えられている。工作精度の高さは相変わらずで、静音志向の対策は手を抜かず、インダストリアルデザインとしての「Define」シリーズの良さは随所に引き継がれていた。
細かい事を言えば、フロント開閉ドアや5.25インチベイの省略や、冷却ファンの電源供給を一括で賄う「Nexus+2 Fan Hub」もこのモデルには搭載されていない。しかしこれをマイナス点とみるのはナンセンスで、フル装備を求めるなら「Define 7/XL」を選べばいいだけだ。兄貴分をまねる必要はない。
検証を終え、「Define 7 Compact」は「Compact」よりも、良い意味での「minimal(ミニマル)」がしっくりくる。小型化を連想させる事をアピールポイントに据えたのかもしれないが、シンプルなミドルタワーPCケースに回帰させた点こそ、1番のセールスポイントであるはずだ。
協力:Fractal Design
株式会社アスク