エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.880
2020.06.16 更新
文:エルミタージュ秋葉原編集部 池西 樹/撮影:松枝 清顕
ここからはRyzen 7 3700Xを使い「ECOモード」の効果と、手動チューニングによるオーバークロックを試していく |
続いて「Ryzen Master」に用意されている「ECOモード」と、「インタラクティブUEFI」からCPUコアクロックとコア電圧を調整するライトなオーバークロックを試していこう。
定格状態の「Ryzen Master」。Ryzen 7 3700Xでは、PPTは88W、TDCは60A、EDCは90A |
Ryzen 7 3700Xでは、「ECOモード」を有効にすることで、TDPを45Wクラスに引き下げられる |
「ECO」モードを有効にするとPPTは60W、TDCは45A、EDCは65Aに設定された |
シングルスレッド処理時は定格とほぼ同じ4.375GHzまでクロックが上昇 | マルチスレッド処理時は概ね3.70GHzで駆動する |
コア電圧1.44375V、コアクロック4.40GHzまではベンチマークも問題なく動作 |
マルチスレッド処理時も全コア4.40GHzで動作する |
もともとTDP 65WのRyzen 7 3700Xだが、「ECOモード」を有効にするとTDPを45Wクラスまで下げることができる。また手動オーバークロックでは、まず電圧を安全圏内の最大値である1.44375Vに設定し、クロックを少しずつ上げたところ全コア4.40GHzまではOSの起動だけでなく、各種ベンチマークやストレステストをクリアすることができた。
最後に「CINEBENCH R15」「CINEBENCH R20」「3DMark:TimeSpy」「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ」のベンチマークテストを使い、チューニングの効果を確認していこう。
「定格」と「ECOモード」を比較すると、シングルコアテストは電力制限の影響を受けないためスコアに変化なし。一方マルチコアテストでは約6%スコアが低下した。また「4.40GHz」では、シングルコアテストが約3%、マルチコアテストは約12%スコアが向上し、その効果はかなり大きい。
「CINEBENCH R20」でもスコアの傾向はほぼ同じ。ただし、「定格」と「ECOモード」ではマルチコアテストの差が約10%へと広がっており、長時間負荷が続く処理では、電力制限の影響が大きくなるようだ。
3Dグラフィックス系のベンチマークでは珍しく、マルチコアCPUへの最適化が進んでいる「Time Spy」。「CPU score」は、「ECOモード」と「定格」で約5%、「定格」と「4.40GHz」で約4%向上。これに伴い、総合スコアもきれいに「ECOモード」「定格」「4.40GHz」の順に並んでいる。
「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ」でも「ECOモード」「定格」「4.40GHz」の並び。ただし、その差はいずれも約1%で誤差の範囲。グラフィックス性能が重要な処理では、CPUクロックの影響はあまり大きくないようだ。
「4.40GHz」/アイドル時のサーモグラフィ | 「4.40GHz」/高負荷時のサーモグラフィ |
最後に「CINEBENCH R20」動作時の消費電力の違いと、「4.40GHz」駆動でストレステスト「OCCT 6.0.0」を実行した場合のサーモグラフィの結果を確認していこう。まず消費電力だが、「ECOモード」を選択することで約40W低下。性能差が最大でも約10%しかなかったことを考慮すれば、「ECOモード」を活用すれば、省電力ながらかなりハイスペックなPCを組み上げることができる。
また「4.40GHz」へのオーバークロックによって消費電力は約50Wと大幅に増加。ただし、CPU周りのエアフローが悪いオールインワン型水冷ユニットを使用した状態でも、電源周りの温度は最高55.3℃で頭打ち。冷却性能には全く問題はなく、より上位のRyzen 9シリーズを使った場合でも、電源周りがボトルネックになることはないだろう。
これまでならAMD X570やAMD TRX40など、ハイエンドチップセット(およびマザーボード)が必要だったPCI-Express4.0。しかし、AMD B550の登場により、その裾野は大きく広がった。使えるのはCPUレーンのみという制限はあるものの、パフォーマンス面のデメリットは一切なし。どうしても2枚以上のPCI-Express4.0 SSDが必要な場合や、マルチグラフィックス環境が必要なプロクリエイターを除けば、AMD B550で困ることはないだろう。
またZen 3アーキテクチャを採用する次世代CPUへの対応が謳われ、将来的なアップグレードが、AMDによって正式に保証されているのもIntelプラットフォームにはない大きなメリットだ。
そして今回の主役である「B550 Steel Legend」に目を向けると、厳選された高品質パーツや、強力な冷却機構など、信頼性・安定性を重視した設計はこれまで通り。さらにシリーズ最高峰の14フェーズデジタル電源回路や、 4,733MHzの高クロックメモリの対応、通常の2.5倍の帯域幅を誇る2.5ギガビットLANなど、一部の機能についてはAMD X570チップ採用の上位モデルを上回る。今回の検証では敢えてRyzen 7 3700Xを使用したが、Ryzen 9シリーズを組み合わせたハイエンドPCのベースとしても十分にその役割を果たしてくれるだろう。
これまでの「Steel Legend」シリーズは、ミドルレンジの中でもローエンドに近いコストを重視したモデルというイメージが強かったが、「B550 Steel Legend」では大きく様変わり。ユーザーが求める機能には一切妥協せず、華美な装飾を排除した、質実剛健なメインストリームモデルが誕生した。
協力:ASRock Incorporation