エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.885
2020.07.04 更新
文:エルミタージュ秋葉原編集部 池西 樹/撮影:松枝 清顕
ここからはCore i9-10900Kのオーバークロックを試していこう。今回は「CLICK BIOS 5」から、コア倍率とコア電圧のみを調整する簡易的な手動チューニングで、どこまでクロックを引き上げることができるのか試してみることにした。
「CLICK BIOS 5」からコア倍率とコア電圧のみを調整する簡易チューニングを実施 |
コア倍率52倍、コア電圧1.375VならOSだけでなくベンチマークも問題なく完走できた |
マルチスレッド処理を実行した場合の「HWiNFO64」の結果。すべてのコアが5.20GHzで動作しているのが確認できた |
OSの起動は、コア電圧1.40V、コアクロック5.40GHzの設定でも問題なかったが、「CINEBENCH R20」実行時にフリーズしてしまい動作は安定しなかった。そこでクロックや電圧を少しずつ下げて調整したところ、コア電圧1.375V、コアクロック5.20GHzの設定であれば安定動作させることができた。
次にオーバークロックの効果とその際の消費電力を確認していこう。今回使用したベンチマークソフトは「CINEBENCH R15」と「CINEBENCH R20」で、アイドル時の消費電力は起動直後10分間放置した際の最低値、高負荷時はいずれも消費電力が高かった「CINEBENCH R20」実行中の最高値を採用している。
シングルコアテストでは、Turbo Boost機能によって定格でも5.00~5.30GHzまでクロックが引き上げられるため、いずれもその差は約2%とごくわずか。一方、マルチコアテストは「CINEBENCH R15」で約8%、より負荷のかかる時間が長いマルチコア向けのテスト「CINEBENCH R20」でも約5%スコアが上昇した。動画のエンコードや、CGレンダリングなど、マルチスレッドに最適化された処理なら、確実にその効果を体感できるだろう。
オーバークロック時/アイドル時のサーモグラフィー結果 | オーバークロック時/高負荷時のサーモグラフィー結果 |
また消費電力を確認すると、アイドル時は約8W、高負荷時はあくまでも短時間だが120W近くも上昇するかなり強烈な結果。ただし「MEG Z490I UNIFY」では、コンシューマ向け最高峰のパーツによる堅牢な設計や、ヒートパイプとアクティブファンを組み合わせた冷却システムによって電源回路の温度は70℃前後で頭打ち。CPUの冷却さえしっかりとしてやれば、Core i9-10900Kのオーバークロックでも動作が不安定になることはなかった。
Mini-ITXフォームファクタながら、ハイエンド向け「MEG」シリーズに分類されるMSI「MEG Z490I UNIFY」。さすがにATXのハイエンドモデルと比べると“電源回路のフェーズ数が少ない”や“拡張スロットが1本のみ”といった、Mini-ITX特有の制限はある。
ただし、電源回路については、フラッグシップと同等の高品質パーツや、アクティブファンを組み合わせた高冷却ヒートシンクを搭載することで問題を解消。さらにThunderbolt 3や、2.5ギガビットLAN、Wi-Fi 6無線LANなど、オンボード機能が充実しているため、どうしても拡張スロットが必要なものと言えばグラフィックスカードぐらい。よほどヘビーな使い方をしない限り、問題になることはないだろう。
以前に比べると、イルミネーション機能は控えめになっているマザーボード。しかし、ミドルレンジ以上の製品でオンボードLEDを搭載していないのは「UNIFY」シリーズぐらいのものだろう |
第10世代Intel Coreプロセッサでは、TDPが大幅に引き上げられているため、CPUの冷却をどうするかという問題はあるものの、小型かつハイパフォーマンスなゲーミングPCのベースとしては申し分のない仕上がり。そして最近のミドルレンジ以上の製品では、唯一とも言える「UNIFY」シリーズの“光らない”デザインを好ましく感じるユーザーは、決して少なくないはずだ。
協力:エムエスアイコンピュータージャパン株式会社