エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.888
2020.07.11 更新
文:エルミタージュ秋葉原編集部 池西 樹/撮影:pepe
続いて、消費電力を確認していこう。今回は起動直後10分間何もせず放置した際の最低値をアイドル時、「CINEBENCH R15/20」実行時の最大値を高負荷時として計測を行った。
アイドル時は「G242-Z10」が最も高くなっているが、これは5台の高速ファンや1,600Wのリダンダント電源ユニットなどを搭載している、サーバーシステムであることを考えれば当然の結果。一方、高負荷時はRyzen Threadripper 3990Xとの比較で約90W、Ryzen Threadripper 2990WXとの比較でもわずかに下回り、最も低くなった。
64コア/128スレッドながら、TDPは225Wとかなり控えめなEPYC 7742。ワットパフォーマンスは非常に優秀で、導入時のイニシャルコストはもちろん、ランニングコストも含めた総保有コスト(TCO)も重要になるデータセンター用CPUとしては、魅力的な存在と言えるだろう。
テストセッションのラストは、ファンの回転数と騒音値をチェックしていこう。今回は初期設定のアイドル時と、高負荷時のファンのノイズが最も大きかった「Sandra 2020:マルチメディア処理」に加え、「GIGABYTE Management Console」のファンコントロール機能を使い、電源投入直後を想定したフル回転と、敢えて10%まで絞った(一応)静音状態の4つの条件で計測を行った。
「GIGABYTE Management Console」(「MEGARAC SP-X」)のファンコントロール機能を使えば、ファンの回転数を細かく調整できる |
基本的に空調の効いたサーバールームに、隔離された状態で設置されるラックマウントサーバー。当然ながらコンシューマ向け製品のように静音性への配慮は一切されていない。
起動直後を想定したフル回転(16,000rpm前後)時は98.6dBAに達し、リビングにいた家人が何事かと部屋を覗きに来たほど。一度起動してしまえば、その後はフル回転になることはなかったが、初期設定では最低回転数は7,000rpm前後。ノイズも76.4dBAまでしか下がらず、ヘッドセットを使っていても音楽はほとんど聞こえない。
そこでファンの回転数を10%まで絞ったが、回転数は4,200rpm、ノイズレベルは66.7dBAまでしか抑えることができなかった。普段CPUクーラーの検証を行っている場合、50dBAを超えるとかなりうるさく感じるが、それを遥かに上回る。さらにファンの口径が80mmと小さく、耳障りな高周波が中心ということもあり、今回はやむなく夜間のテストをほぼ断念した。おそらくそのような勇者はいないと思われるが、一般家庭での運用はかなり厳しいだろう。
今回はGIGABYTEの2Uサーバー「G242-Z10」を使い、64コア/128スレッドのEPYC 7742のパフォーマンスについて検証してきた。すでに同じコア数で、コアクロックが大幅に高いHEDT向けCPU Ryzen Threadripper 3990Xが登場していること。さらに使用しているベンチマークもコンシューマ向けということもあり、ややスコアが低く感じるかもしれない。
ただし、マルチスレッド関連のテストでは、EPYC 7001シリーズと同じコア数で、より高クロックなRyzen Threadripper 2990WXを完封。そしてメモリ帯域ではRyzen Threadripperシリーズの2倍以上をマークしており、より高度な並列処理が要求されるデータセンター向けアプリケーションでは、大いにパフォーマンスが期待できる。
データセンター向けCPUでは、未だIntel Xeonシリーズのシェアが大きい。しかし、コア数、PCI-Expressレーン数ともに余裕があり、“シングルCPUでデュアルCPU並の性能”を発揮できるEPYC 7002シリーズの存在感は、これからさらに大きくなっていくだろう。
そして「G242-Z10」に目を向けると、これまでもエルミタでは「MZ31-AR0」や「W291-Z00」といったEPYC対応製品を取り上げて来たが、ここまでサーバーに特化した製品は初めて。
正直、巨大なサイズや、圧倒的なファンノイズなどに戸惑いながらの検証だったが、常に動作を継続できる冗長化構成を追求した設計や、ファンレスのCPUクーラーと4枚のファンレスGPUカードを冷やし切るための内部エアフローなど、普段あまり目にすることができない、サーバーならではのこだわりを随所に確認することができた。
協力:GIGABYTE TECHNOLOGY Co., Ltd. ネットワーク&コミュニケーション事業部