エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.890
2020.07.16 更新
文:エルミタージュ秋葉原編集部 絵踏 一/撮影:松枝 清顕
もはや説明不要、メカニカルスイッチの代名詞的存在であるCHERRY MXが搭載されている |
「Quattro TKL」に搭載されているキースイッチは、メカニカルスイッチの大定番であるCHERRY MXスイッチだ。ソフトなタクタイルスイッチのCHERRY MX茶軸、クリック音を追加した(いわゆるクリッキータイプ)CHERRY MX青軸、軽量リニアのCHERRY MX赤軸、打鍵音を30%低減した静音リニアのCHERRY MX SILENT(静音赤軸)の4種類から、好みでチョイスできる。
なお押下圧(1cN=0.98g重)と接点は、茶軸が55cN±25cN/2.0mm±0.6mm、青軸が60cN±15cN/2.2mm±0.6mm、赤軸が45cN±15cN/2.0mm±0.6mm、静音赤軸が45cN±15cN/1.9mm±0.6mm。キーストロークは静音赤軸が3.7mm(-0.4mm)で、それ以外が4.0mm(-0.4mm)となっている。軽快な打鍵感を特徴とするスイッチが揃っており、純粋にフィーリングの好みからマイ・ベストを探ることになるだろう。
数字だけではピンとこないかもしれないが、裏返してみれば一目瞭然。重厚極まる肉厚のキーキャップが採用されている |
そしてスイッチに加えて、1.5mmと肉厚なキーキャップも見逃せない。一般的なキーキャップに比べ0.5mm厚く仕上げられており、現行モデルでここまで分厚いキャップは珍しい。キーの押下に重厚さが加わり、薄手のキーキャップとは別モノといえる、しっとりとした上質な打鍵感を実現している。
また、キーキャップの素材には、一般的なABS樹脂に比べ熱や油分への耐久性に優れるPBT(ポリブチレンテレフタレート)樹脂を採用。さらにキー印字方式には、キャップにインクを浸透させる熱転写式の昇華印刷が採用され、長期間使用しても文字が薄れにくい。特に文字入力の頻度が高いユーザーにとっては、嬉しいポイントだろう。
ホームポジションから手を離すことなくマウス操作も可能になる、トレードマークのポインティングスティック。ボタン入力を絡めた操作には、多少の慣れも必要になる |
「Quattro TKL」のアイデンティティとも言えるポインティングスティックは、よく吟味されたモジュールが採用されているだけに高性能だ。高感度な静電容量式の2次元センサーが搭載され、カーソル速度は十分。操作力は0.098~0.98N(約10~100g)とされ、スティックに人差し指を触れるだけで、大画面でもストレスなくカーソル移動が可能だ。
ボタン操作はスペースキー両脇の左右マウスボタンの役目で、基本的に親指で操作することになる。初めこそやや慣れが必要だったものの、習熟することで、スティックに触れる人差し指と、ボタンを押す親指の動作がうまく融合していく。「Fn」キーを押しながら垂直方向にスティックを動かすと、縦スクロールも可能。入力メインのタスクにおけるマウス操作は、このスティックだけで十分まかなうことができる。
静電容量式のモジュールから伸びたポインティングスティック。キャップを外すと分かりやすいが、周辺のキーキャップも新たに金型を起して成形されたものだ |
そしてスティックの操作感を左右するキャップは、エラストマー樹脂を採用した凸型と凹型の2タイプ、オレンジと紫の2色が付属(それぞれスペア付き)する。個人的に引っかかりの良さから凹型が気に入ったが、これまた直感に従い、好みのタイプをチョイスすることになるだろう。
なでるように操作するのに向いた凸型と、指先へのフィット感と引っかかりが良好な凹型キャップを用意。カラーもオレンジと紫から選べる |
ゴムのように柔らかいプラスチックである、エラストマー樹脂製のキャップ。汚れや破損に備えたスペアも同梱されている |
ちなみにポインティングスティックがごくまれに意図しない方向に動く場合があるが、これは「ThinkPad」のトラックポイントでもおなじみだったオートムービングだ。スティックが出力値を補正・調節するキャリブレーションの際に起こる現象で、特にOS起動時やスリープ復帰時にスティックに触れていた場合に発生することが多い。
もっともスティックから手を離しておけば、ほどなくキャリブレーションが終了して原点補正(オフセット補正)が完了するため、心配することはない。こうした多少の“気難しさ”と付き合う必要はあるものの、ポインティングスティックの便利さと引き換えなら安いものだ。
ポインティングスティックの仕様上、発生する可能性のあるオートムービング。ただし頻繁に発生する場合は、USBポートの給電環境が不安定な可能性がある |