エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.916
2020.09.29 更新
文:エルミタージュ秋葉原編集部 絵踏 一/撮影:松枝 清顕
開発で最も気を使ったという排熱問題。トップパネルの違いで内部温度にどれほど影響が出るだろうか |
コンパクトマシンの課題である冷却問題は、はたして「Premium-Line Z490FD-Mini」では克服できていたのだろうか。ベンチマーク中におけるCPUおよびGPUの温度を確認し、高負荷時の挙動を読み解いてみよう。「3DMark Time Spy Extreme」を動作させた際の最大値を高負荷時、何もせず10分間放置した際の数値をアイドル時に設定、ハードウェアモニターの「HWiNFO」で計測を行った。
なお、トップパネルを付属するメッシュパネルに換装した状態と、標準構成のホワイトオークウッド天板の両方を計測。トップパネルの違いによる冷却効率も合わせて確かめてみよう。
木製の天板を載せているということは、いわば排気口にフタをしているような状態。さすがにメッシュ仕様にすれば違いが出るだろう。そう思っていただけに、いい意味で裏切られることになった。高負荷時でもCPU温度が3℃、GPU温度も2℃しか変わらず。最大の熱源になるグラフィックスカードを外排気仕様にしたことが奏功しているようだ。
温度にそれほど変化がない一方で、その分ファンの回転数は上がっているはず。そうした予想も外れ、CPU/GPUともにファン回転数に大きな変化はなかった。つまるところ、冷却効率を気にすることなく、どちらでも好きなトップパネルを選べるというワケだ。ただしグラフィックスカードの外排気クーラーはもとより動作音は大きめ。アイドル時はそれほど気にならないものの、高負荷時にはそれなりの存在感を主張する点は覚えておこう。
最後は、ベンチマーク中における「Premium-Line Z490FD-Mini」の消費電力をチェックして動作検証を締めくくろう。先ほど同様に「3DMark Time Spy Extreme」を動作させた際の最大値を高負荷時、何もせず10分間放置した際の数値をアイドル時に設定し、ワットチェッカーを使用して計測を行った。
高負荷時の消費電力は、搭載する電源ユニットの半分程度。これは電力変換効率としてはほぼ理想的な環境である一方、構成パーツを考慮すれば妥当な消費電力に収まっている。電力面における不安はまったくないと言っていいだろう。
ミドルタワー級のハイエンド構成を破綻なく組み込めるMini-ITXモデルとして、「Era ITX」は極めて良くできたPCケースだ。240mmラジエターのオールインワン型水冷ユニットに2スロット仕様のグラフィックスカード、複数台のストレージが16リットルの筐体に同居することができる。そしてそれらの搭載能力と、優れたビジュアルが融合。小型・高性能というコンセプトを追求する上で、理想的なベースと言える。
しかし現実として、緻密に計算されたレイアウトは組み込みのシビアさそのものであり、思わぬパーツ間の干渉に泣かされることもしばしば。そうした面倒をクリアし、理想の構成を実現してくれるのが「Premium-Line Z490FD-Mini」だ。
単にスペックのみを見てパーツを組み合わせるのではなく、排熱のマネジメントにこだわったパーツチョイスはさすが。最高峰のハイエンドパーツ構成を可能にしながら、標準のオークウッドパネルでも冷やし切れるパッケージに仕上げた。デスク上に置くことができる小さなハイエンドPCで、しかも映える。小型・高性能を追求するユーザーにとって、理想のマシンの一つになりそうだ。
協力:株式会社サイコム