エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.937
2020.11.27 更新
文:撮影:松枝 清顕(解説)/ 検証セッション:池西 樹
最後に非接触型デジタル温度計によるヒートシンクのポイント別温度と、サーモグラフィの結果を確認していこう。こちらは「Precision Boost Overdrive」を有効にした状態で、「OCCT 7.0.4 CPU:LINPACK」を30分実行した後に計測をしている。
「OCCT 7.0.4 CPU:LINPACK」実行後のポイント別温度計測結果 |
ポイント別温度を確認すると、CPUソケット直上の温度が最も高く、CPUから離れるに従って温度が低くなる理想的な結果。なおPCI-Expressスロット側の側面温度が飛び抜けて高いのは、MSI「GeForce RTX 3080 GAMING X TRIO 10G」がセミファンレス駆動に対応しており、グラフィックスカードに負荷がかからない場合、ファンが停止して付近の温度が上昇してしまうためだと思われる。
アイドル時のサーモグラフィ結果 | ストレステスト30分実行後のサーモグラフィ結果 |
またサーモグラフィの結果を確認すると、アイドル時、高負荷時ともヒートパイプ付近の温度が明らかに高く、受熱ベースで吸収した熱がヒートパイプを伝ってヒートシンクに拡散している様子が見て取れる。
AMD Ryzen 9 5950Xによる良好な冷却性能は、言わば下馬評通り。メーカーおよび代理店の両担当者が口を揃えて推すだけの事はあった。風量で力任せに冷却するタイプでななく、騒音値も及第点以上。PCケースの中に閉じ込めれば、より静音状態が保てるだろう。ナロー型放熱フィンとは言え、幅48mm、長さ142mmのアルミニウム板56枚を一面に敷き詰めれば、かなりの放熱面積になる。まんべんなく熱が拡散できれば、空冷でも十分に高い冷却能力を得られる事が実証された。
見た目こそオールインワン型水冷ユニットほどスマートではないが、ヒートシンクと冷却ファンで構成された空冷クーラーの底力はまったく見劣りしない。ついでに言えば、近頃のDeepcoolはパッケージデザインを含め、数年前に比べて格段に洗練されている。製品のリリーススケジュールも、闇雲に乱発することなく、きちんと管理されている事が分かる。一見製品の善し悪しとは異なるファクターにも思えるが、それらはブランドの信頼性をコツコツ積み重ねていくには必要であり、国内市場での入手性も安定してきている事から、今後はもっとシェアを伸ばしていくだろう。2021年のDeepcoolにも大いに期待したい。
協力:Deepcool Industries
株式会社アスク