エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.951
2021.01.07 更新
文:池西 樹(検証)/文・撮影:松枝 清顕(解説)
中国を拠点とする新興メーカーのProArtist。国内市場での販売を取り仕切るのは、国産(企画・開発)CPUクーラーの自社製品を軸にワールドワイド市場でも著名な株式会社サイズだ。
サイズと言えば、ROCCATやTURTLE BEACHといったゲーミングデバイスの取り扱いも活発だが、一方で、本来ライバルであるはずのNoctua製品を正規に取り扱う販売代理店である事をご存じの人も多いだろう。若干の違和感はありつつ、本業は冷却機器メーカーながら自社製品で培った国内販売網が、今では商社としての大きな強みになっている。
そして今回の主役となるProArtistも、商社としてのサイズの強みを大いに活用したいと目論む新たなメーカーだ。目論むとは少々聞こえが悪いが、なにも楽をしてひと儲けしようというワケではない。これにはProArtistの成り立ちを説明する必要があるだろう。
中国名「雅浚」(雅=洗練、浚=クール)と表記される同社は、冷却機器で著名なProlimatechの元製品マネージャーであるJerry Chen氏が設立。エンスージアスト向け冷却メーカーとして立ち上げられた。参加メンバーはオーバークロックを主とした自作経験と知識が豊富と聞く。単なる販売目的に留まらず、自作派のニーズを理解している点は注目に値するだろう。さらにProArtistに期待してしまうのが、エルミタではお馴染みの株式会社サイズ・開発担当S氏による事前リークだった。
執筆時(2020年12月31日)未だ「Coming Soon」の表記が取れないProArtistの製品サイト。職人気質の集団という事で、マーケティングやプロモーションまで手が回らないといったところだろうか |
実は国内市場での取り扱いが検討されている段階から、S氏からは”それらしき情報”は耳にしていた。前出Jerry Chen氏はProlimatechの元製品マネージャーである事はご紹介済みだが、Prolimatech自体、あのThermalright出身者により立ち上げられたブランドである。その系譜はバリバリのハイエンド冷却機器であり、ProArtistの可能性を見出したS氏が関わる事で、企画・製造・販売のパッケージがたんなる新興メーカーではない事は容易に想像ができる。筆者がProArtistに期待を寄せている理由は、おおよそご理解頂けるだろう。ちなみにJerry Chen氏はサイズ製クーラーの大ファンだそうだ。
プレスリリース記事で紹介済みだが、ここでProArtistの新製品第1弾ラインナップを確認しておこう。2020年11月18日発表、12月2日より出荷が開始されたのはCPUクーラー2種、冷却ファン2種、サーマルグリス1種だ。
CPUクーラーの「GRATIFY3」「DESSERTS3」は、今回検証を行う主役。いずれも120mmファンを搭載させたサイドフロー型CPUクーラーで、前者はコストパフォーマンス重視、後者はハイエンド向けといったところだ。
冷却ファンはベアリングに流体軸受けを採用する120mmサイズの「MAGISTERIAL12」「MAGISTERIAL12T」。前者は吸気型の通常ファンで、後者は排気型の二重反転専用ファンとなる。「GRATIFY3」「DESSERTS3」には増設用ファンクリップが付属し、デュアルファン構成による二重反転が構築できるというワケだ。なお標準でロースピードケーブルやY型分岐ケーブル、エクステンダーケーブルが付属するNoctua並の豪華仕様。固定用ネジもフレームを傷つけない事を理由に、一般的なテーパーネジではない点にもメーカーのメッセージを読み取る事ができる。
MAGISTERIAL12 | MAGISTERIAL12T |
熱伝導率6.0W/mKのシリンジ型サーマルグリス「W15」は、塗布用のフレームとヘラが付属。誰でも容易に同じコンディションに仕上げる事ができる。内容量は2g、熱抵抗率は0.06℃-CM2/W。
W15 |