エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.957
2021.01.29 更新
文:撮影・エルミタージュ秋葉原編集部 松枝 清顕
左側面の開口部が広く、組み込みの妨げになる物がないだけに、ハイエンド志向のグラフィックスカードも難なく収める事ができそうだ。そこで搭載テストにはMSI「GeForce RTX 2080 GAMING X TRIO」を使用。有効スペース405mmに対し、カードサイズは奥行き327mm(幅140mm、厚さ55.6mm)で、数値的には全く問題がない。
実際に搭載してみた結果、グラフィックスカードのVGAクーラー末端からラジエターまでの距離は実測で約50mmを残した。外形寸法こそ一般的なミドルタワーPCケースだが、大型PCケースに匹敵する内部容積が確保できている事が分かる。
グラフィックスカードの直下には、120mm逆回転ファンが位置する |
組み込みセッションの最後は、搭載可能箇所全てにストレージを固定してみたい。まずは5.25インチオープンベイだ。搭載テストには奥行き170mmのDVDスーパーマルチドライブを用意。内部から両サイドのツメで固定されたベゼルを外し、前面から挿入。左右をミリネジでネジ留めすればいい。
5.25インチオープンベイが主流だった頃、光学ドライブの固定方法はワンタッチ式が広く採用されていた。今となっては装備されていること自体が珍しく、「P10 FLUX」を選択する決め手になるケースもあるだろう |
次にCPUクーラーメンテナンスホール下部の空きエリアを利用した、2台分の2.5インチSSD専用ブラケット。まずはブラケットを外し、2.5インチSSDの両側面合計4箇所をミリネジで固定。SSD搭載済みブラケットを元の位置に戻せば作業は完了する。
左右各2本のミリネジでSSDを専用ブラケットに固定。なおコネクタは下側に向けて固定すると、ケーブルの取り回しがしやすい |
そして前寄り右側面搭載スペースには、上段に3.5インチHDD、下段に2.5インチSSDが搭載できる。いずれもドライブの背面からのネジ留め式を採用。つまりマザーボードトレイに対してはベタ置きとなり、コネクタは下向きに設置する事になる。裏配線スペースを無駄にしない設計は、ストレージを1台でも多く搭載したいニーズに応えるもの。せっかくの装備だけに、有効活用したい。
3.5インチHDD頭上には各種スイッチおよびアクセスポート類のケーブルが接近しているが、画像の状態でも右サイドパネルを閉じる事ができた |
最後はストレージ収納部のメインとも言える、2.5/3.5インチ共用シャドウベイだ。コの字型のスチール製ユニットは、1台分の専用トレイと天板の空きスペースを利用し、2.5インチSSDまたは3.5インチHDDx2台構成、もしくは2.5インチSSDと3.5インチHDDが1台ずつ搭載できる。
専用トレイのみを使用する場合は問題ないが、コの字型ユニット天板部にストレージを固定する場合、一旦はユニットを取り外す必要がある。作業的には底面から2本のインチネジを外す事になるため多少面倒だが、そもそも頻繁に付け替えるものではなく、この程度であれば許容範囲内だろう。
シンプルながら多機能。2.5インチSSD/3.5インチHDD共にコネクタは右側面に向けて固定しよう |
昨年9月にリリースされた「DF600 FLUX」を皮切りに、「FLUX」3部作のラストに投入された「P10 FLUX」。Antecらしい外観デザインだけに前評判は高く、3作中で最も期待されたPCケースと言えよう。今でこそ珍しくないシンプルなフラットデザインだが、Antecが火付け役である事をご存じの読者も多いだろう。さて同社の代名詞である「Performance」シリーズの最新作は、どんな出来映えであったか。
防音パネルを4面に採用するあたり、間違い無く静音がテーマであり、従来なら製品名に「Silent」が付いたはずだ。しかし今回の主たるテーマは「F-LUX PLATFORM」であり、どうしても「FLUX」を付けざるを得なかった。そんな事情はさておき、市場想定売価税込11,480円はかなりバーゲン(掘り出し物の意)ではないだろうか。
印象として「P101 Silent」に比べ剛性はやや落ちるものの、工作精度そのものは高いレベルが維持できている。さらに「F-LUX PLATFORM」のベース筐体は3作目として熟成されており、大幅に改良するような余地は見当たらない。本文中に触れたマイナス点も、振り返れば細かい事で、製品自体の印象を悪くするほどのものではない。
先陣を切った2モデルとは異なり、相反する冷却性能(高エアフロー)と静音性を両立させることが、このモデルに課せられたテーマだった。それを上手く再現し、カタチにしたのが「P10 FLUX」だ。市場からの反応が気になる所だが、組み込み易さとデザインの受け入れやすさが相まって、オリジナルブランドPCのベース筐体に採用される可能性もあるだろう。そのポテンシャルは十分に感じさせる1台だった。
褒めたところでAntecには言いたい事がある。当初「FLUX」は3兄弟で完結と聞いていたが、今年の1月15日(現地時間)には新作の「DF700 FLUX」がアナウンスされている。ここまで3部作というストーリーで進行してきた手前、まったく立場がない。早速の方針転換は「F-LUX PLATFORM」が好調であることを意味するのだろう。どうやらまだまだ増殖しそうだ。
協力:Antec
株式会社リンクスインターナショナル